第42話 tamaoのこと

きょうの午後、来週からはじまるアナリスト向けのミーティング用に、僕は社内のプロモーションの部署に電話をして、発売前の新機種のデモ機を手配していた。


たまたまプロモーションの部署にいるS野さん(カニの人)と話をすると、S野さんが電話の最後にいたずらっぽく言った。


「ねぇ、○○ちゃん知ってる?」


「え?何をですか?」



「tamaoがさぁ・・・   妊娠したよ」


「ええっ・・・・」


S野さんは驚いて絶句する僕に


「じゃね」


と言って電話を切った。






tamaoとは僕の同期で、昔、向かい合わせの席で仕事をしていた。


そのころの部署は会社の経営計画を立てる部署で、毎晩明け方までみんな仕事をしていた。


で、たまの飲み会になると皆はじけてしまうのであった。


tamaoは綺麗な顔立ちをした美人であったが、酒癖の悪さと男勝りの性格が災いして、オトコが寄り付かなかった。


そんなtamaoは酔うとかならず正体をなくし、


「あたしの○○くーん」


といって泣きながら僕に抱きついてくるのだった。(反則)


「○○くんってかわいいね。あたしが養ってあげてもいいよ。」


との暴言を吐いたのは他でもないこのtamaoである。(しらふで昼間)


泥酔したtamaoを何度タクシーにぶち込み、横浜のはずれまで送ったことだろう。




S野さんによると、僕はぜんぜん記憶にないのだが、tamaoがクレーマーの電話で困って入る時に、僕が電話をかわってあっという間におさめてしまったのだという。

しかもそのあと、


「なーにへこんでんだよ」


といって、マックのおまけのドナルドの人形をあげたのだという。


(そういえばなぜかtamaoの机の上にはドナルドの人形が置いてあった気がするが、あれは僕があげたものだったのか・・・。)


それがどうもきっかけらしい。




tamaoはその後、オトコに恵まれなかったらしく、結婚は遅かった。


(思えば結婚の話もS野さんから聞いた。)




そんなtamaoがははになるのか・・・・


そんなtamaoが・・・・






時は移ろう。


そして、ひとも。


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