第36話 いったいどんな青春送ってんだか

中学・・・



僕は学年で一番ちっちゃくて、髪が少し長く、女の子みたいな感じだった。


男子から圧倒的な人気があり、女子にはまったくモテなかった。


しかも、同じ学年の女子に気になる子がまったくいなかった。




当時僕が好きだったのは、23歳の女の人だった。


毎朝行く駅のコンビニにその人はいた。


雑誌を立ち読みしていたら声をかけられた。


(「逆ナン」というやつである)


その人のたおやかな雰囲気に僕はすぐに虜になった。


同学年の女子にはないオトナの雰囲気が、さらに僕を夢中にさせた。


何度も逢った。


(彼女が何をしていた人なのか、いまだに僕は知らない)





数ヶ月経ったある日、彼女は突然僕に言った。


「北海道に行くことになったの。私、結婚するの。」


衝撃だった。そんなのってありかよ と思った。


こんなに好きなの知ってて。こんなに好きなのに。





そしてそのまま、彼女は遠くへ去っていった。





数ヶ月して、彼女から連絡があった。


数日間だけ戻るという。


そして、戻ってきた彼女と逢った。


彼女は言った。


「旦那と上手くいっていないの。彼、仕事もしていないし。」


たまらない気持ちになった。


北海道で幸せになってくれていたのではなかったのだ。





別れ際、さよならを言って背中を向けた彼女の手を


僕はぐっと掴んで強く引いた。無性に彼女が愛しかった。


そしてキスをした。


彼女のキスは優しかった。


やさしく愛しむような、柔らかなキスだった。


「まったくー。しょうがないなぁ。」彼女はそう言った。


「帰ってきたら、僕がもらってあげますよ。」僕は強く言った。




今になって考えると、中学生が、どうやってもらってあげるんだ?

と可笑しくなるが、僕は本気だった。


ずっと彼女と居たいと心から思った。





そして彼女は北海道に帰り、僕はひとり残された。





数年後、大学生となった僕は、北海道を友人と旅をすることになり、

札幌で彼女と逢った。


彼女は言った。


「あの時の一言、結構効いたよ。」




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