第20話 ギプスがとれる
通院のため、会社は一日休み。
整形の医者は、レントゲンを見たあと、「じゃギプスとっちゃいましょうか」とヤブからボウに言った。
特殊な電動工具でギプスをずんずん切断してゆく。
基本的には電動ノコギリなのだが、皮膚に触れても切れず、ギプスだけが切断されてゆく。
3週間程動かしていなかった足は、ギプスの形のまま固まってしまっていて暫らく動かなかった。
圧倒的な爽快感を期待していたのだが、なんてことは無かった。
靴を片方しか履いてきていなかったので、病院のスリッパを借りて帰ことになる。
擦り切れて色あせたエンジ色で、マジックで大きく「日大」と書いてある。
これでもかと言わんばかりに大きく書いてある。(しかも下手な字でだ。左右のバランスというものが全く無視されている。書いたのは幼稚園児か?)
これではどう見ても、病院からの脱走者だ。
なるべくサラリと、涼しい顔をして電車に乗る。人にはそれぞれ「事情」というものがあるのだ。
ちなみにスリッパは、「返さなくてもいいです」と看護師さんに言われた。
だが僕は来週きちんと返そうと思う。また誰かがこのボロ布のようなスリッパで、電車に乗るのかも知れないのだから。
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