第6話 伝説の店へ
土曜の朝。
ケータイが鳴り、起こされる。
金曜日は夜中にミク日記を書いていたので、土曜の朝は遅くまで寝ていた。
「あ、寝てた?きょう暇でしょ。青山の例の店行かない?(強引)」
電話の主はケンゾー。学生時代の友人だ。
ケンゾーはいつもまるでマイペースで人の都合などはあまり考えない。
僕は寝起きが超弱いのでふにゃーっとしていると、ケンゾーは、
「僕これから用事あるから昼間は電話しないでね。夕方にまた電話するから。じゃね。」
といって向こうから電話を切ってしまった(笑)
ケンゾーは、まぁだいたいいつもこんな感じなのである(笑)
しかもこのケンゾー、いまだにメール機能がないケータイを使っているため、
連絡手段が電話か留守電しかない
というマイペースっぷりである(爆)
実は僕はその日は、秋物の買い物に出かけて・・・
そのまま丸ビルに移動し「マンゴツリー」http://www.mangotree.jp/index.htmlで夜景を見ながらタイ料理のディナーでも・・・
と計画していた。
が、
「青山の例の店」と言われては、断れない。
というか、「行く」とは一言も言っていないものの、すでにケンゾーの中では行くことに決定されている。
寝ぼけつつもマンゴツリーに電話を入れ急遽ディナーをキャンセルする。
寝ぼけがおさまってきた頃に冷たいシャワーを浴び、おっとりと準備して秋物の買い物に出る。
家の前のバス停からバスにひょいっと乗り、すぐに日本橋に着く。
コレド日本橋は休日でも比較的すいていて、ゆっくり買い物ができる。
入っている店は多くはないが、大人仕様の店ばかりなので、品揃え的には大体事足りる。
ユナイテッドアローズでジャケットを数枚はおり、秋物のジャケットをお買い上げ。
秋物ジャケットに合わせて織りの入ったシャツ数点とカシミアの素材感のあるタイ数点をお買い上げ。
アタマの回転は遅いが、買い物は早い。
スーツも、と思ったが、
「?? 買いすぎ??」
とふと我に返り、今回は見送っておく。
コレド前からまたバスに乗り、一旦荷物を置きに戻る。近いのでラクチンだ。
外は暑かったので、帰ってまたシャワーを浴びていると、
ケンゾーから留守電が入っている。
「6時半に表参道の交差点でお願いしまーす」
まだ時間があるなと思い、エアコンをつけて横になったら気持ちよくて、そのままうたたねをしてしまった。
起きると既に6時近くになっている。
ケンゾーの留守電に「ちょっと遅れるよー」と伝言しておく。
表参道に着いてケンゾーとおち会い、
「待った?」と聞くと
「いやぁ、銭湯入ってた」と言う(爆)
はぁ?銭湯??(ここ、表参道なんですけど??)
と思うがまぁこういう人なのである(笑)
だから遅れても何の問題もないのだ。
というか、時間通りに来ていたら、ケンゾーが風呂を浴びている間、どこかで待っているハメになっていた(笑)
紀伊国屋の脇の路地を入るとその銭湯があった。その先に小さな看板が出ている。
「Radio」
ケンゾーのいう「例の店」とはこの「Radio」のことなんである。
この店、伝説のお店なんである。Bar関係の仕事をしている人でこの店を知らない人はまずいない。
「1st Radio」「2nd Radio」を経て今は「3rd Radio」なんである。
バーテンダーが憧れるバーテンダーのいるお店であり、併設されているレストランでは美味しいフレンチが頂ける。
そのくせ、アラカルトをカウンターで という食べ方もアリで、バーであるのにワインもきっちり置いてあるというある種「楽園」のような店なのである。
(しかも向かいはうまい具合に蕎麦屋になっていて、飲んだあとの締めにそば という夢のような配置になっているんである。)
お店に入るとケンゾー馴染みの店員さんが穏やかに迎えてくれた。
落ち着いた照明と、上品だがどこか懐かしく居心地の良い店内。
ただ、よく見るとグラスや食器は言うに及ばず、小物の1点1点や酒瓶の配置まで、計算されつくした空間なのだと気付く。
きょうはケンゾーと僕と家人の3人。ケンゾーはコースを予約しておいてくれたらしく、店員さんは「予約で3人なんておっしゃるので、ケンゾーさん今日はどうしたのかと思いましたよ」なんて言って優しく笑っている。
まずは生のフルーツを絞ったシャンパンで乾杯。僕はかわいらしく旬の「桃」をチョイス。
(ベースのシャンパンはヴーヴクリコのようだった。)
前菜を頂き、その後、ワインを頂く。馴染みの優しい店員さんは「リストには載せていないですが・・・」といって、ボルドーの2000年物の良いのを奥からコッソリ出してくれた。(2000年、2003年はアタリ年なんである。)
お魚はスズキのポワレ。お肉はホロホロ鳥のグリエ。
美しく盛られた美味しい美味しいフレンチと、美味しい美味しいワイン。
ああ幸せ。
デザートとエスプレッソをもらい、まずはお食事を片付けてしまう(笑)
さて、
といってテーブルからバーカウンターへ移り、本格的に飲み始める(笑)
カクテルは、同じお酒でもお店や作る人によってだいぶ味が変わってしまうものである。
ここのカクテルは美味しい。とても美味しい。
ここより美味しいカクテルを出す店を僕は知らない。
(知っている人が居たらすぐに連れていって欲しい/笑)
おそらく東京で一番なのではないかと思う。Bar関係者の中でもこの店の出身者は多いと聞く。
美味しいがキッチリお酒が入ったカクテルなので、キッチリ酔う。
そのあたりにまやかしはない。
ドライでないマティーニをもらい、
マンハッタンをもらい、
間にスモーキーなアイラモルト(57度!)をはさみ、
さらにバーテンさんオススメのまだサンプルしか入荷していないというフィレンツエの薔薇の香りのするリキュールをもらい、
ジンフィズをもらい、
な~んてしている間に、電車の時間などはすっかり過ぎ、
さらにその後2杯飲んで、
ちょうどよい感じでお店を出る。
「しかし、3人ともお強いですよねー」なんて店員さんは優しく笑っていたが(笑)
お店の雰囲気も、お料理の味も、カクテルの美味しさも、バーテンさんとの会話も大満足。
ちょっと、人には教えたくない1軒なんである。
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