これまで
小学校低学年の頃から、片波は目が悪かった。クラス内にも眼鏡をしている人はいたが、自分の目が一番悪いと思っていた。水泳の授業でビート板を使った時もそう。途中顔をあげると前方の壁がぼんやりして距離が掴めず、いざビート板が壁に当たっても気付かないのだ。地面が変わっていないから泳ぐのをやめて立ってみると、周りにいるクラスメイトが笑っていた。何回か泳げば、その悔しさから距離を掴めるようになり、親から度付きゴーグルも買ってもらった。
年を追うごとに片波の視力は当たり前のように下がり、ピタリと止まることは無かった。眼鏡を外すと、黒板の文字はおろか、視界全体にモザイクがかかって何もできなかった。
中高に上がっても、視力の低下は抑えられなかった。眼鏡の力を借りるのは、片波にとってこれ以上にない嫌なことだった。物に頼らず、自分自信の視力で生活したい。モザイク世界が綺麗になる美しさ。片波はそれにこだわっていた。
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