2.赤と黒

9章:有栖川桃子は文学少女である(回想と合宿出発)

第51話 第2部ですが私はキレてる

 青い空。

 白い雲。



 吸血鬼。



 ……うん。

 最ッ高に似合わないな。

 水と油、トムとジェリーばりに素材が喧嘩してるな?






 このコンクリートジャングルの一体どこに生息しているというのか、大都会ど真ん中でも遠慮なしに鳴き叫ぶセミの声をBGMに。

 私、望月もちづき白香しろかは、手持ち無沙汰にぼんやりとそんなことを考えていた。


 何の気なしに、ごく自然と対象へ視線が行く。


 夏が似合わない筆頭、ギムナジウム系大天使こと吸血鬼の若林わかばやし紅太こうたと、同じく吸血鬼の末裔である奥村おくむら緋人あけひとである。

 私と同じく肩から大きな鞄を掛けた彼らは、すこぶる気怠そうに道路を眺めていた。


 うん。緋人くんはまだしも、若林くんは……紅太くんが直射日光に晒されているのは、ビジュアル的に少々ハラハラするものがある。

 いくら太陽が大丈夫だからって、色素が薄いし線は細いし、このまま溶けてしまうのではないかといらん心配までしてしまいそうだ。日焼けとか酷そうだけど、平気なのかな。



 などと考えていると。


 ふとこちらを向いた、紅太くんと目が合う。

 不意打ちにどきりとして、私は思わず息を呑んだ。



 ――が。



 私は、そこから無理矢理に目を背け、彼らから離れ距離を取った。




 いかん。

 いかんいかんいかん。


 流されては! 流されてはいけない!

 いくら大天使が今日も今日とてとっても天使だからって、敵対するような夏の日差しがじりじりと彼に照りつける様がそれはそれでちょっと背徳的で素敵だからって、その不安げでつぶらな瞳が捨てられた子犬みたいで庇護欲をそそられるからって。

 なあなあにしちゃあ、いけないのだ。




 だって、私は今。

 とっても、怒っているのだから――!








+++++


【登場人物】


望月もちづき白香しろか

 人間。

 本作の語り部であり、一応ヒロイン(変態)。

 いま浸かっている沼は鬼滅からヒプマイからツイステから数あれど、メインは刀剣乱舞。


若林わかばやし紅太こうた

 吸血鬼の末裔。

 ギムナジウム系銀髪赤目の大天使。

 好きな食べ物は、ビーフストロガノフととんこつラーメンとチョコバナナラテ。


奥村おくむら緋人あけひと

 吸血鬼の末裔。

 笑顔の貴公子の皮をかぶった、ゲス黒スーパー攻め様。

 最近のマイブームは、面識のない犬猫を眼力だけで威圧して屈服させること。


桜間さくらまたまき

 人間。

 繊細で見目麗しき男の娘。

 好きなコスメブランドはNARS。


安室あむろ蒼夜そうや

 人狼の末裔。

 俺様な白香の元義兄。

 最近の悩みは、隣の家の前を通るたびに柴犬に吠えられまくること。


瀬谷せやあい

 人狼の末裔。

 見た目は王子様系で中身は狼な、ちょっと危ない男装の麗人。

 好きな女性のタイプは、すらっと背が高く、つややかな長い髪が似合う凛としたキレイ系の人。

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