not used to seeing
まさに
対する友軍を示す青のブリップは、自機を示すひとつのみ。機能性だけを追求して快適性を排除した
「コントロール、こちらカルヴァリオ分隊隊長機〈ラフィングフォックス〉。ポイント
《ラフィングフォックス、こちらコントロール。状況を送ってください》
「敵主戦力は
しばしの沈黙、無線の向こうで歯痒そうに息を呑む気配がする。
《司令部が急襲を受けています。要求は受理できず、また、撤退も許可できません》
切り捨てるべきは、孤立した雑兵一機。四肢が腐り落ちてでも器官は守らねばならない。あからさまな「徹底抗戦の末に死ね」との命令に、発令した
判断を過たせば、死ぬはずのなかった人間が死ぬ。犠牲の伴わない戦場などなく、誰かが犠牲になることを前提に、より少ない損失で最大の戦果を得るために情を削ぎ落とす。
そしていま死ねと命じられた青年は、天秤にかけられた末に切り離された。妥当な判断だと見做している自分のことが俄かに信じられず、沈着を常とする青年は瞳を揺らめかせる。
ただ、それだけだった。
死にたくないと、然るべき希求さえ青年は抱くことができず。
「
《……ごめんなさい。カルヴァリオ分隊に、ラフィングフォックスに栄光あれ》
謝罪はいらない、と反射的に思う。
スクリーンを凝視する。積み上げられた瓦礫の向こう、音は聞こえずとも確かに接近していることを肌が感じ取る。やがて、それは姿を現す。自律式無人戦闘機、〈イーバ〉の兵士が。
無数の光学センサが自機に集中する。視界を埋め尽くす、センサの赤い光点。
異形の戦闘機械。人類よりも数世紀は先を行く科学技術に支えられた、鋼鉄の獣。
きっと〈イーバ〉の連中は大規模侵攻のずっと前から地球のことを探っていたに違いない。そうでなければ
それでも、退くことなどあり得なかった。無謀であることは理解していたけれど。
無抵抗の末に殺されることだけは、矜持が許さなかった。
大規模侵攻から三年、人類は未だ〈イーバ〉の姿さえ知らなかった。
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