ヘタレな僕のちょっとした勇気
いつものように屋上に向かおうとすると空と会った。というよりも空を見かけた。
空の周りを数人が取り囲んでいた。制服を見るに全員女子だ。
楽しげな会話のムードではなく、むしろギスギスした空気だ。
空は俯いたままで、笑顔が消えていた。
「ねーちょっと、さっきからこいつ黙ったまんまなんですけどーマジでキモいんだけど」
その女子は大声で話しているのか何を言ってるのかこっちまで聞こえてきた。これがイジメだと気づくのにさほど時間はかからなかった。
気がついたら僕は空の手をとっていた。周りの女子の視線が痛い。
「ちょ…」その女子が言葉を紡ぐ前に、「行こう!」と空の手を引いて屋上に全力疾走した。
屋上に着いても空は黙ったままだった。。かといってさっきのことを聞くのは野暮だろうか…経験のない僕にとってどの選択肢が正しいのかは分からなかった。
「ごめん。」ぽつりと空がつぶやいた。
「さっきのこと気に病んでるなら大丈夫だよ。」今の僕にできることこうやって心配させないことだけ…
僕の言葉で元気が出たのか少し笑顔になった空がこっちを見てきた。
「大地。今から言うこと信じられる?」と突然聞いてくる。
「大丈夫。信じるよ。」
「笑わない?同情しない?」
「笑わないし同情なんてしたくもない。」
その言葉で吹っ切れたのか空は僕の方をまっすぐ見て
「私、両親がいないんだ…」と話し始めた。
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