第8話【藪の中】

「誰だ⁉ upしたヤツは名乗り出ろっ! 名乗りでねーと殺すぞ!」十一郎が教室中に凄んでいた。

 だがむろん名乗り出る者など出ようはずもなかった。

「どーせ名乗り出ても殺すんだろ?」二郎のツッコミが入った。

「あ? 二郎テメ、まだ蹴り入れられてーのか⁉」

「ゲホッ、裏切られたんだよテメーは」

「俺を裏切ってタダで済むと思ってんのか?」

「タダだと思ってねーから匿名でやったんだろ? この混乱に乗じてな」

「うっ!」

「いい加減気づけよ、アン時と同じだって」

「どん時だよ⁉」

「オメーが俺に〝ルール〟を説いてたアン時だよ」

「あ?」

「『正義』の側に立った攻撃ってスゲー気持ちイイって、オメーも解ってただろ?」


 その二郎の物言いに十一郎はなにをひとつも口から出せず、蹴りすらも出せなくなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る