第7話【upしたヤツは誰だ⁉】

『みんな二十三郎だけを撮ってるからよ、誰がやらせたのか、やらせたヤツの顔が解んなくなるからな』

 十一郎の顔が土色になっていた。その動画はついさっきここで起こっていたこと。十一郎と二郎のやり取りがしっかりと動画となって記録されていた。

 動画は既にSNSを通じネット上に解き放たれていた。upである。その動画をこの教室に残る全ての人間たちが各々のスマートフォンで確認していた。それだけではなかった。ご丁寧に十二分な背景加工を施された二十三郎の脱衣動画にリンクまで張られていた。


「チッ、やっぱもう晒し者にしてんじゃねーか」八郎のスマホを見ながら二郎が口にする。


 放課後の教室内の状況は既に混沌としていた。この場にいなければ絶対に撮れない動画。たった今ここで起きたことを記録した動画がSNSを通じ既にネット上にupされている。むろんそのアカウントからではupした者の正体は掴めない。この間授業で造ったアカウントとはまったく別の裏アカウントであると想像された。

 もはや二十三郎を拘束し続ける者も無い。拘束を解かれた二十三郎が脱がされた下もそのままにへたり込み「チクショウ、約束を破ったな!」と涙声のまま怒鳴っている。

「ウルセエっ」と怒声をあげ十一郎が突然襲いかかる。

「イチっっ!」しかし殴られたのは二郎でもなく二十三郎でもなく八郎だった。

「なんで俺だよ⁉」八郎の声が飛ぶ。

「るせえっ! 普段からテメーが二郎とつるんでるのは解ってんぞ!」

「あったまワリーな、テメーは!」普段のお調子者な振る舞いからは信じられないほどの言動を八郎はした。

「誰に口きいてんだっ⁉」十一郎が激しく反応する。

「よっくこの動画見ろよ! 俺が映ってるじゃないか!」


 八郎の言った通りだった。

 動画には八郎の姿が映り込んでいた。動画を撮っていた人間の全身像がそんな中に映り込むはずもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る