第4話 趣味

私にはとある趣味があります。

自分でもやってはいけないとわかっているのですがどうしても止められないのです。

その行為は人に希望を与え、また時には絶望を与えてしまいます。

この力を、私はあの事件から〝プレゼント〟と呼んでおります。

簡単に言えば…そうですね。

「貴方にぴったりの力をあげましょう」

無力な人に力を与える、ですかね。


まあ、力を扱うのも所詮は人間(例外もあるのですが)、やはり何かしらのトラブルや事件等も起こってしまうことがしばしばあるのですが…。

「今回の結末はどうなるんだろう!」

私は、いや、僕は例えどんなバットエンドでも見たい、結末を知りたい!

力を持った者が〝英雄〟となってしまう?

それとも〝愚か者〟になるんだろうか!

他人の不幸が好きなわけではないんだ。

ただ僕は…


物語の結末、そして結果を見てみたいだけなんだから。

それが、あの事件の後に僕の趣味になっちゃった事なんだ。

もし僕があのあと彼を観察しなければなこんな趣味を持たなかったんだろうな。

でもね、僕は後悔なんて無いんだ。

だって、だってだってだって!

こんなに楽しいんだもん!

面白くて、楽しくて、ワクワクするんだ!



「いやそれを私に言われても困るんだが」

「Σ(Д゚;/)/」

「いや何故驚く」

「えー、だってアルターさんなら共感してくれると思ったんですよー」

「貴様…私を何だと思っているのだ?」

あの時コイツの力とやらを拒否してから妙に懐かれている。

と言うか口調も大分変わっている事からも解る通りどうやらかなり気を許しているようだが、と言うか何故私はコイツのような変人どもに懐かれているのか…

「それはアルターさんがいい人ですから。

いい人には人が寄ってきますから」

「私自身、いい人だと思われる行為について全く心当たりが無いのだが?」

「まあそれはともかく!アルターさんだって実験好きですよね?」

「まあ、私の全てと言っても過言ではないな」

「つまりそういうことです!」

「貴様の悪趣味と私の実験を一緒にするんじゃない」

「悪趣味とは何ですか!ちょっと結末を見たいだけなんですよ!」

「その結末が大抵被害が出ているだろう!

いい加減止めろとは言わんが少しは自重しろ!」

「しーてーまーすー!

…多分」

「おい待て多分とは何だ」

「おっともうこんな時間ですか!

それではアルターさん、また次の機会にでも!」

「もう来るな!」



趣味と言うのは中々理解されない物でございます。

とはいえ、私自身他人の趣味を理解できたことも少ないのですがね。

「あー、おー?」

「おやエクレアさん、珍しいですね、一人で来るなんて…いや、お連れ様がいましたか、珍しいですねアナさんとエクレアさんが一緒にいるとは」

「え、えと…その、エクレアちゃんに似合う服を作ってくれと、しょの、エヌナインさんに頼まれまして…」

相変わらずいろんな人達に頼まれているようですね。

と、いいますかアナさんは何故服職人にならないのでしょうか?

アナさんの作る服は何故か魔法によるエンチャントがついていて高ランクの冒険者の方々から依頼が来るほどの性能らしいですが。

アナさん自体の実力はあるんですが、もしかして未だにD級なのはまさか…

「え、えと、その、商人さん…」

「はい、何を買いますか?」

「えっと、そのぉ、服を作ったので…着てくれませ」

「お断り致します」

「待って下さい!ただ!ただ私は!このドレスを着た商人さんを見て観察して行動や恥じらいを見たいだけなんです!」

「悪意無く悪意しか感じられない事を言うの止めてくれませんかねぇ!?」

と言うか何か悪化してません!?

以前はまだ女装を見たい、という程度だったのに!

「その、なんといいますか、依頼を頼まれて、その、依頼主さんのパーティーにいい男の子がいまして…」

「着させてみたら恥じらって、それに、まさか…」

「そのぉ…凄く、可愛いなぁって、涙目とか、スカート押さえたりとか、フフ、」

「待って下さい!男の子にそんな感情を持っては行けません!

いくら貴女が(旦那ポジだけども)女でも!

いたいけな男の子にそんな事をしては行けません!

女性恐怖症になったらどうするんですか!」

現に僕は昔のトラウマで男性恐怖症ですしね!

「わ、わかってますよ…、ちゃんと自重はしています…きっと」

「待って下さい何故そこできっとと言ったのですか、あ、お買い上げありがとうござい…って逃げないでください!」

「あーおー」

「…どうしました?」

「おにぎりー」

「一応私のお昼ご飯なのですが…仕方ないですね、あげますよ」

「おー!」

はぁ、エクレアさんと話してたらもうどうでもよくなりましたよ…

…アルターさんもこんな気持ちだったんですかねぇ?

今度お詫びに新しい本でもあげますか。



「くっ、クククッ、ふひっ、ふはは!

ああ、ああ!いいぞ!実験は成功だ!

まあ多少批判はあるだろうが、仕方ないだろう、これも、これも…そう!

世界平和の為なのだからな!

さて、キメラ初期型はまだ幼生体…

だが多少の改造はできるな!」



一方そのころエヌナインはギターを弾いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る