第2話

「う、がが、うがー」

「・・・」

「おや、お久しぶりですね、お二人とも」

「うが!」

「・・」

今日も私はスケジュール通りに街を歩いて商売をしています。

「・・・、・・」

「うがうがー!」

「ええと、これですかね?」

「・・」

少々個性的な常連さんもいて、少し楽しい毎日を送っています。

「・・・・、・」

「はい、ちょうどですね、ありがとうございました」

「がーあー!」

こんな私を必用としてくれる人たちもでき、生きる目標もできてしまいました。

「暖かいですね、もう、春ですか」

ですので、少しまっててください。

「そろそろ冒険者さん達も活動が強くなるでしょうし、より一層頑張るとしましょう」

とりあえず明日は王都を出るとしましょう。


「おや?商人さん、明日出るのかい?」

宿屋の女将さんに明日出ることを伝えて、少々話してしまいました。

「ええ、これでも旅商人ですので、もう春でしょう?冒険者さん達が様々な村を拠点にし始めるでしょうから物資を村に売る我々がいませんとね」

「確かにそうだけどねぇ…商人さんは良心的な値段で、しかもいろんな物を売ってくれるからありがたかったんだけどね、また来ておくれよ?」

「ええ、もちろん。

ですが勘違いしないでいただきたいのですが…」

「安く売るのは昔の恩、だろ?」

「…です」

「そんな話しは他の人には話さんさ、商人なのに目立ちたくないっていうことを知ってるからねぇ」

「ええ、しかしもう一つ」

「恩が赤字になってるのをどうにかしたい、かい?」

「そうですよ!泊めて貰うだけではなく、

〝いろいろな〟事をして貰っていますし!

このままでは赤字のままなのですよ!」

「律儀だねぇ」

「そもそも私の様な者を歓迎してくれる人など全くと言っていいほどいませんし、それだけでもありがたいのです!」

「いいや、悪党は私が一番嫌いなやつだが、商人さんを歓迎してるのは」

「悪党ではないから、ですよね」

「そうさ、わかってるじゃないか。」

「女将さんには頭が上がりませんよ、おかげで死ねないじゃないですか」

「あの言葉が無ければ私がどうしようと死んでるだろう?ならあの子のせいさ、私は悪くないよ」

「…ですね、アレを恨みます、それでは」

さて、荷物をまとめに…

「ありがとね、アイツは私の敵でもあった」

え?

「さて、いらっしゃい、何泊するかい?」

…ほんともう、貴女にはかないませんよ。


「商人、いくのか」

「ええ、門番さん、そろそろ村を転々とする生活になりますよ」

「そうか」

相変わらず寡黙な方だ。

しかし、職務に忠実で誰よりも真面目な貴方は好感が持てます。

「ふん、私は旦那がいる、そんな目で見るな」

…勘違い気質も相変わらずでしたか。

というか貴女まだ結婚してなかったはずですが…

「えっと、そのぉ、リナと僕の、身分の差が…あって…」

「おやアナさん、まあ貴族の娘と冒険者では身分が違いますからね」

「それと、その、商人さん…」

「はい、どうしました?」

「ドレス、作ったので着ませ…」

「お断りします」

この人も相変わらずですね!

確かにどちらかと言えば女性よりですが!

私は男なのです!

男なーのーでーすー!

「似合うのに…」

ボソッと言わないでもらいたい。


門を出て、馬車を走らせ、芽吹き始めた若葉の香りを吸い込み、私は思いを巡らしました。


…みんな、敵はとったからね。

でも、あんなこと、したくはなかったかな。

「…これじゃあ、また弱虫って言われちゃうかな?」

あの頃皆と語り合った夢、皆で世界を巡って冒険をしたり、物を売ったり作ったり…

「それぞればらばらの事を言ってましたけど、でも皆一緒と言うところは変わっていませんでしたねぇ」

今では僕が独りで全部こなしてますが…

「皆の分、ちゃんと生きれてるかな?」

独り言を呟きながら、僕は村に向かって行った。

「頑張ろうっと」

自分の白い長髪が風になびいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る