異世界でチートを与える側

邪神ちゃん

第1話

「・・・」

どうすればいいのだろう。

「・・・っ」

どうすればよかったのだろう。

暗い路地裏でうずくまる。

何時同じ場所でゴミを漁る。

ボロボロの布を見つけてはそれで寒さをしのいだ。

生ゴミを見つけたらそれを吐きそうになりながら生きるために食べた。

でもこんなこと別に珍しいことでもない。

だって僕だけじゃないから。

皆も同じだから。

皆、同じで、僕だけじゃなくて、必死で、生きて生きてイキテ、いきて、

だから大丈夫だった。

僕だけじゃないから、皆もそうだから。

ここでは普通のことでしょ?

だからなのかはわからないけど、皆協力して生きていて、

ゴミをもらったり、逆にあげたり、僕たちにとってはとても貴重なゴミを僕らは譲り合っている。

だって一人じゃ生きれない。

一人になりたくない。

僕たちが唯一誇れるものが、大切な物が仲間なんだから。


だから。

だから友達も、大切な人もいて、

大切で、大切で・・・


でも、死んじゃいました。

あっさり、死んじゃいました。

赤いナニカがでて、

あたたかいのに、冷たくて、僕はウゴケナクテ、タスケラレナクテ、


ナンデ?


僕たちは、ただ生きていたいだけなのに。

吐きそうになってもよかったなんて笑いながら皆で一緒にゴハンを食べて、

寒い、とか言いながら一緒に寝たり。

悪いことをしたの?

大人達よりも小さい子供の僕たちが、殺されるぐらいのことをしたの?


でも、ソイツの顔を見て違う、と気づきました。

だって、だってだって、

ソイツは笑っていたんですから。

楽しそうに、心底楽しそうに。

そして、一人生き残った僕はにんまりと笑ったソイツから目が離せなくなりました。

その場で服を脱がされて、無理やり仰向けにされて、首に皆を殺したソレをあてられて、


犯されました、無理やり。

しかもソイツは男だったのに。

笑っちゃいますよね?

もう、痛くて、気を失ってしまいそうで、

叫んでしまいました。

でも叫んでも、ソイツは笑みを深めるだけで、

大人達が駆けつけても、ソイツは何も焦らずに、笑って、

僕は解放されました。

でも大人達はいなくなりました。

何時も一緒にいた皆も、いません。

そこに残ったのは、僕と、赤だけでした。

はっきりと、残酷に彩られた、鮮やかで吐き気を催す、そんな色だけでした。


僕は気を失いました。

「僕は気を失いました」

死にたくもなりました。

「死のうとも思いました」

でも、きっかけは、貴方です。

「でも、きっかけは、貴方だった」

ねえ?

「ねえ?」


そこにコロガッテルノハ、

「殺しに快楽を覚えた異常性癖をお持ちの英雄さん」

「●●●●!●●●●!」

何を言ってるのだろうか?

聞いたこともない言語だ。

でも、何となくはわかる、わかります。

恐らく、命ごいでしょうね。

何と贅沢な!

でもこれは私が優しいということになりますよね?

なんせ

「皆に、命ごいすらさせなかったくせに、自分だけ命ごいですか?」

ソイツに何本目かのナイフを突き刺す。

皆が称えた英雄は、

鼻水を汚くたらしながら叫び、地面に転がっている。

傷口を踏みにじる。

皆が綺麗だと言った顔は原型を留めてはいなかった。

黒い髪を掴む。

そして珍しい黒い眼を覗きこみ、その眼をそこらにあった石で潰した。

女性が魅了されていた声は聞くにたえない叫びだけを永遠と出されるだけ。

「魔法はどうしました?」

残った左目を手でえぐる。

「自慢の聖剣とやらは?」

えぐった目を口にねじ込む。


何時間そうしていただろうか。

流石は英雄、まだ生きている。

まあ、いい。

「貴方にプレゼントがあるのですよ」

さあ、この、力を、貴方に。


私は単なる旅商人。

少々特殊な力をもっております。

それは、特別な力を与えるというもの。

さて、英雄さん?

「貴方にぴったりな姿でしょう?」

英雄は醜いオークへと変貌していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る