第49話 俺と勝利

「で? 総統長さん。俺の案、のらない?」

「……のってください、だろう? 貴様の両親がどうなっても……」

「俺は最初に俺を捨てた人間に興味はないんだよ。どうとでもすればー?」

「貴っ様!! 《幻獣ファンタジー》のような化け物を家族だなんだと言いながら、自分は血の繋がったものを捨てるのか!」

「俺は聖人君子じゃないの。言ったろ? 俺を捨てたやつに興味はないんだよ……それに? そんなことできないでしょ? 《幻獣保護委員会ファンタジ・ル・エール》はあくまでも《幻獣ファンタジー》に関することのみで、政治には介入できないんだから。雇用云々は政治の範囲ですよーだ」


 バルーフからテレパシーらしきものを伝って流れてきた情報をもとに、総統長に言った俺。煽っていくスタイル、素敵だと思います!

 いまにも血管きれそうですみたいな、血圧ががんがん上がってるのがわかる顔で総統長は俺たちに向かって呟いた。


「……のってやっても、いい」

「えー? 聞こえなーい。なんだってー?」

「のってやってもいいと言っている!!」

「はあ? のらせてください、お願いします。婆さんを、家族を奪ってすみませんでしたって爺さんの墓の前で謝るべきとこだろ? なに上から目線で言ってんだよ」

「く、クロエ、そこまで……」

「しなくちゃいけないんだよ、バルーフ。こいつらはお前らを玩具かなんかと勘違いしてるんだ。簡単に切り捨てられる道具だって思ってる。だから身に染みこませなきゃいけないんだ、お前たちがそう思ってることで傷つくひともいるんだって。これは俺たちのためだけじゃない、俺たち以外の《幻獣遣いファンタズマ》や《幻獣憑きファンタジア》のために言っとかなくちゃ」

「そうじゃなくて。おれたちもまだ見舞ったことのない敬一郎の墓にこいつらを連れて行きたくない」


 思わず真顔になった。周りをぐるりと見渡すと、バルーフの意見にみんな賛成なのか頷いている。どんだけ爺さんが好きなんだこいつら、いや、俺も好きだけどね!?


 総統長たちを無視した……というか忘れられたことに口を間抜けにもぽかんと開けているやつらをまるっと思考から追い出し視界からも失せさせた後で。盛り上がり始めたこっち陣営では焼き土下座だのはらわたをくり抜いて縄跳びさせようだの物騒な言葉が出ている。怖すぎて笑える……いや、正直笑えないけど。


 さすがに、処刑方法ともいうような提案に。総統長が顔を青ざめさせながら苦々し気に呟いた。


「……のらせてくれ、頼む」

「はいはい、じゃあさっさと婆さん元に戻して2日後までに返してね。……バルーフ、一旦帰るよ」

「わかった!」


 合点承知と言わんばかりに胸を張りながら瞬間移動を発動させたバルーフの後ろで、悔し気にこちらを見る総統長は武士の情けで見てないことにしてやった。俺、武士じゃないけど。

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