第38話 俺と見かけは子ども中身は大人

「クロエとかいったか、けいいちろうのまご」

「……うん。俺の名前は片倉クロエ、片倉敬一郎の孫だよ」

「さっきはわるかったな、オレさまにめんじてゆるせ」

「ちょっと、クロエさまに対してそんな言葉遣いはないでしょ!? レオ、いい加減にしないと殴るよ!?」

「ファニー、大丈夫だから! 小さい女の子殴るとか言わないで!」

「……クロエさま、レオはこう見えてあたしより年上だよ? ファイアー・ドレイクは身体の成長が遅いだけで、中身は大人だからね?」

「え!?」


 なにその見かけは子ども中身は大人 (まんま)などっかのやばい薬で身体を小さくされちゃった名探偵的なのは! ってかファニー俺よりは年下だけど19か20くらいの年ごろで……え? でもファニーより年上なの!? 

 ファニーが背中をさすることでやっと泣き止んだレオナルドを見ると、燃えるような赤い瞳が俺を睨んでいた。


「ち、ちなみに。何歳かうかがっても?」

「ふん、オレさまは758さいだ!」

「人間でいうところの20代後半だよ。ほぼ30。ファイアー・ドレイクは寿命が長いから」


 おそるおそる敬語になってしまった俺に、腰に手を当てて自慢げに胸……というよりは腹を突き出すように偉そうに言ってきた幼女にまじで? っと思わず言葉がひらがなになった。


 だって、だってさあ! ファイアー・ドレイクだよ!? 筋肉隆々とした大男をイメージしてたわ。バルーフだって最初の買い物の時しまむらで大きい男物の服何着も買ってたじゃん!

 あれ見てああ、大男なんだなって思ったんだけど!? てか喋り方とかめっちゃ子どもじゃん! もっと大人らしく喋ってよ! 


 しかも一人称がオレさまって……厨二? バルーフと言いドラゴンには厨二が多いの!? 言いたいことがありすぎて、言葉が口から出て行かない俺より先に、真ん前にいるバルーフの本体が俺を振り返って手を差し伸べた。


「クロエ、レオナルドの服を出してやってくれ」

「え!? あんな大きい服マジで着せんの!?」

「レオナルドの服はあれくらいぶかぶかじゃないと。怒ると炎を纏うからな、あと動きやすさも大重視だ!」

「みんな!? ドラゴンはみんな戦闘民族なの!?」


 いや服持ってくるのが俺の役目みたいなところあるからちゃんと出すけど! 靴や靴下は男物、それも結構大きいものを用意していたから着れないだろう。つっこみつつ赤と黒の大きめのTシャツを2枚、重ね着するように言いつけてリュックサックの中から取り出してバルーフに渡す。なんでバルーフかって?


 23の大人が10にもなってないような幼女にぶかぶかの服渡すとかなんか犯罪っぽいじゃんか! その点バルーフならまだ女同士にも見えなく……いや、見えないけど。主に身長のせいで。でも俺は関わってないから罪悪感はないね! せこいとか言うなし!


 服を着る瞬間を見ないために顔を背けてると、生暖かい視線を感じて振り返るとチャーリーが俺を見ていた。


「……なに?」

「いやのう、なんや。幼女趣味かいな?」

「違うわ! 人の、それも女の子の着替えを見る趣味はないんだっての!」

「ひゃっはっはっはっはっは」

「笑い方が圧倒的におかしい!!」


 腹を抱えて笑うチャーリーにうちの家族って変人だらけかよ! 内心吠えつつがっくりと肩を落とす。と、洋服を着終わったのか肩を後ろから叩かれてまた振り返ると、そこにはでかいTシャツをワンピースのように着こなしたレオナルドがいた。袖口でまだわずかに違和感があるのか目を拭っている。髪は相変わらず揺れる炎で縛っていた。


 そこでまたばたばたと足音がして。ファニーがレオナルドを抱えてバルーフの分身の腕を掴み、チャーリーはバルーフの本体に抱き寄せられた俺ごと抱え込むようにバルーフに掴まった。

 そこでまた瞬間的に移動する。そこにあったはずの空間が歪んで、耳鳴りがした。

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