第31話 俺とお着物
ジャンクフードもどきなお昼ご飯が終わり、まったりと食後の俺はカフェオレ、バルーフはココアオレ、ファニーが抹茶オレを飲みながらまったりしているときに。(お世話になってます、ブレンディさん)
そういえば、いままでなんにも疑問に思わなかったけど町に行ってメイド服って絶対目立つよねーと俺が言えば、バルーフはどこか見覚えのあるというか帝王樹で作ったという腕輪をどっから取り出したのか手に持ってた。
なんでも、俺の分を作るときに家族の分も作っておいたらしい。すごい、バルーフ有能! と思ったけどすぐに認識をずらす魔法がないと外にも出られない
しかしその疑問はファニーの不思議そうな声にすぐに断ち切られる。
「え……あたしのお着物ってもう16年も前のでしょ? ぼろぼろだと思うんだけど……」
「ファニーが好きそうな服、買っておいたから平気だぞ!」
「あー……そのことでファニーに謝らなきゃいけないことがあるんだけど」
「なに?」
「「地下の財宝少し売りました、ごめんなさい!!」」
勢い良く頭を下げると、俺はテーブルぎりぎりで止まったもののバルーフは打ち付けたのか鈍い音がした。上目にファニーの反応を見ていると打ったらしいおでこを押さえてもんどりうっているバルーフが視界の端に見えた。
結構重い音したもんな、痛かっただろうけどギャグ狙いだったの? こいつ?
俺たちの言葉に一瞬顔を青くしたファニーだったけど、魔道具かどうかはバルーフが見分けたから魔道具には手をつけてないと追加で言うとほっと顔を緩ませた。本当に魔道具に手をつけてなければ他の財宝はどうでもいいみたいだ。
「なんでお着物と財宝を売ったことに関係が……あ、そっか。お金ね! 人間は生きていくのにお金が必要だもの、仕方ないよ。っていうかお着物あるなら早く言ってほしかったな、あたしお着物ないと思ってたからこの服着てたんだよー?」
「そこら辺は配慮が足りなかった、ほんとごめんね」
「すまない」
「いいよ、別に。悪気がなかったことくらいわかるもん、じゃあバルーフ。あたしのお着物があるところに案内して!」
お着物って言ってるけど、あれ全部洋服なんだけど大丈夫だろうかと思いつつも。
今日の買い物で俺が一番欲しいものは爺さんの骨ダイヤのペンダントトップを通す銀の長めの鎖だ。銀色の鳥かごに入った骨ダイヤだし、同色で揃えた方がいいだろ。ファニーが作り出せるのは金だけって爺さんの家族の情報が載せられている本のページに書いてあったし。
ベストの下に着た白いワイシャツの胸ポケットの中に入れた爺さんのペンダントトップに手をやりながら考えていると。
「きゃああああああ!!」
2階から悲鳴が下がってきた。
たぶんファニーの部屋だ。バルーフが、買ったものとかは全部それぞれの部屋にわけていたから。黄色い絨毯の敷かれたあの部屋だと思い、俺は椅子を蹴り飛ばす勢いで走り出すと食堂を出てエントランスを駆け抜け、階段を上りファニーの部屋。ドアの開いたそこにたどり着く。
走ってきたため荒く息をついたまま。カーテンを開けているおかげでいっぱいに日差しを取り込んだ部屋の中、洋風の白いクローゼットの中から取り出したのか裾にフリル、胸元にビーズで刺繍のしてある服を握りしめているファニーが青ざめてたから、俺はあせって問いかけた。バルーフ? 悲鳴に驚いたのかファニーの後ろで固まってたよ。
「どうかした!?」
「く……クロエさま、ふ……ふく」
「……服?」
「ここここんなにれえすや細かくて色とりどりの硝子玉がたくさんついてて高かったんじゃないの!? 刺繍もすごいし! あたしだけでも8着もあるのに、他にも家族たちのお着物買ってくれたってバルーフが言ってたけど。あんな財宝でお金大丈夫だったの!?」
「いや、それそんな高くないし」
あ、お着物って言ったけど洋服のことでいいんだ。なんか妙なことに納得しながらレースや色とりどりの硝子玉ってそれビーズだから! と内心ツッコミを入れつつ、ずるっと俺はこけそうになった。いや、笑い事じゃないから。バルーフはまだ固まってるし。
そんなので悲鳴あげるのやめてよ! 単価安いから! ってか《
思わずあっちこっちに散らばる思考だったが、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます