第26話 幕間

幻獣保護委員会ファンタジ・ル・エール》本部にて。


 どこか書斎にも似たその部屋に、黒いローブを着た老年の白いひげを蓄えた貫禄ある男性と同じく黒いローブのまだ年の若い30代くらいの男性が話していた。といっても、老年の男性の方は書斎のような部屋の椅子につき。年若い方の男性は立ってただぺこぺこと頭を下げているのだったが。


「ファーヴニルを片倉に取られたそうだな」

「も、申し訳ありません。本部長! しかもやつら小暮夫人を!!」

「それはいい。あの老害がいなくなったのはいいことだ。しかしファーヴニルだけを連れていくほど愚かだとは思いもしなかったがな。しかしおかげで、片倉の次の狙いがわかるというもの」

「次の狙い……ですか?」


 ずるっとずれたメガネを直しながら、若い方の男性が呟く。それくらいも察せないのかと言わんばかりにふんっと鼻で笑った老年の男性は不愉快そうにひげを撫でて言葉を続けた。


「ファーヴニルは当然他の3匹のドラゴンの様子を片倉に伝えるだろう。ゲオルギウスの竜、ファイアー・ドレイク、エンシェントラベンダードラゴン、この中で片倉が最初に狙うのはエンシェントラベンダードラゴンだと考えられる。なんせ片倉敬一郎の妻だったドラゴンだからな、血のつながったものを見捨てまいよ」

「で、では!」

「改造エンシェントラベンダードラゴン・Lexyレクシィの監視を固め、……そうだな、場所を地下牢へと移せ。しかし他の2匹にも十分注意しておけ……暗示をかけ直しておくといい」

「はい!」


 老人の貫禄に恐れをなしたみたいに裏返った声で返事をして、飛び跳ねるようにで部屋を退出していったのだった。

 それを軽蔑した視線で見てから、老年の男性はLexyレクシィの映っているモニターに目をやったのだった。


「片倉に奪われてはならん、あれこそLexy人類の守護者の器に相応しいのだから」


 そう、小さく呟きながら。

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