第19話 おじさん、勇者、魔王さま…… (19)
えっ? うそ?
今俺の脳裏に走った言葉は、これなのだよ。
だって、もしかすると?
魔王さんは、俺の脳裏の中には何故かしら、記憶がないが? 妻かも知れない女性なのだよ。
まあ、これも、もしかすると、なのだが?
俺の娘?
若しくは、
まあ、どちらでもいいよ……。
とにかくもう少しだけ、ゆるりと
だから勇者さん、今の今ではなく、もう少しだけ時間をくれないだろうか?
俺はそんな事を思うし、
まあ、とにかく、俺は脳裏で、こんな事を思案していると。
「……ん? あああ、儂らの世界に帰れない事はないが? 今の今は無理じゃよ……。勇者、お主も先程、儂の漏らした言葉を聞いたであろう? 儂は主人の車に跳ね飛ばされて、頭を強く打って怪我をしたと……」
「ええ、聞きましたけど? 魔王、それがどうかしたのですか?」
「儂はな、その時に頭を強く打ったようで、異世界ゲートを開く呪文を忘れてしもうたのだよ……」
う~ん、どうやら、魔王さんは?
先程の、俺との、車での接触事故の時に、記憶喪失で……。異世界ゲートを開く呪文を忘れたらしいと、勇者さんに述べたのだよ。
「えっ、えええ! うそでしょう、魔王? 帰還ゲートを開く呪文を忘れたなんて?」
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