第17話 おじさん、勇者、魔王さま…… (17)

 だって、俺自身は、今住んで生活をしてきたこの日本を一度でも、異世界だと思った事などないから、勇者さんへの返答にとても困ったのだよ。


「あああ、そうじゃ、ここは異世界だよ。勇者エヴァ……」


 俺が勇者さんへの返答をどう述べたら良いか? と、悩んでいると。


 俺の胸の中で、甘え泣いていた魔王さんが、顔を上げ──。


 勇者さんへと説明をしたのだよ。俺の暮らしている日本が、だとね。


「えっ? 魔王? 冗談ではなく本当なのですか?」


「あああ、本当だよ。だから先程から、儂達の世界にはない鋼の乗り物が行き交うっているだろうが?」


 魔王さんの言葉を聞き、最初は多分? 勇者さんへは、半信半疑だったのではないかと思う?


 でも、また、俺の愛車のトヨタのハイエースを見て確認をすると。


「えええ、そうですね……。魔王、貴方の御主人が乗っている車と言う乗り物は、私達の世界にはないものですから……。それに最初は、魔王軍の新兵器だとばかり思っていたのですが……。先程から、容姿こそ違いますが、同じ鋼で出来た乗り物が、行き交う姿を私も何度も目にしたので。魔王、貴方が先程から申している言葉に嘘偽りはないようですね……」


 まあ、多分?勇者さんの口調を聞く限りでは、 相変わらず困惑をしている事は間違えないと思われる?


 う~ん、でも、取り敢えず彼女は、魔王さんの話しに嘘偽りはないと、納得をしてくれたのだよ。


「あああ、今更、勇者エヴァに嘘を述べても仕方がない……。それよりも? 儂はどうなって良いから、家の主人だけは助けて欲しい……。儂が先程から何度も述べているが、このひとは、この世界に住む只の人種の男性なのだよ。だから儂らのような魔族ではないから、魔法も使えんし、剣を取って戦う事も出来ないひとなのだよ……」


 また魔王さん、勇者さんに俺の命を助けて欲しいと、嘆願を始めた。


「ゆ、勇者さん、魔王こいつはウソをついているので、信じないでください……。俺がこいつの主人で、本物の魔王なんですよ! だから殺すなら、こいつではなくて、主の俺を殺してください、お願いします……」


 俺を勇者さんからまた庇い始めた魔王さん……。


 俺は彼女には娘の居ると聞いているので、勇者さんの手にかかり、殺さすわけにはいかない……。


 う~ん、もしかすると?


 そのは俺の娘かも知れない?


 もしもそうなら? 親のいない子にするわけにはいかないから。


 それこそ? 俺が命がけで魔王さんを守り、何とか? 勇者さんと刺し違えるしかないかな?


 とにかく、今俺の頭の中で、何か、良い妙案がないかと?


 俺が無い頭を使いクルクルと思案をしていると──。


「い、いや、今はそんな事はどうでもいいのです! 魔王! それよりも? 私達は自分達の世界に帰れるのですか?」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る