第16話 おじさん、勇者、魔王さま…… (16)
俺は声をかけてきた勇者さんに、言葉を返すと──。また慌てて魔王さんを強く抱きしめ、俺の身体で彼女を覆い被るようにしながら庇ったよ。
絶対に魔王さんの首は、勇者さんには渡さないぞ! と、言った感じで力強く……。
絶対に魔王さんを守るのだと、自分自身で強く心に決めて守ったよ。
するとさ、やはり、魔王さんは、また泣き始めた。
「どいてぇえええ! あなたぁあああっ! お願いだからぁあああっ! 妾の事は庇わなくてもいいから、あなただけでも逃げてお願いだから……」
「いいや、ダメだってぇえええ! 逃げるなら君だけ逃げてぇえええ! 俺はここに残るから、魔王さん! 君だけでも逃げてよぉおおおっ! お願いだよぉおおおっ! む、娘がいるんだろう? 娘の為にも君だけ逃げてぇええええええっ!」
「いやじゃ! いやじゃ! 妾だけ逃げるのはぁあああっ! あなたが残るなら妾も一緒に残る……。そして妾も一緒に果てる……」
また、俺達二人は勇者さんの目の前で、どちらが残る! 残らない! と、言った問答を始めたよ。
それもさ、とうとう、男である俺までも泣き始めたよ。
魔王さんにつられるように……。
「あの、本当に、仲の良さそうなところ、本当に悪いのですが……。魔王が、この調子なので。御主人が代わりに私の質問に答えていただけますか?」
う~ん、どうやら?
勇者さんの声色を聞く限りでは、本当に彼女は困っているようなので、俺も慌てて泣くのをやめて──。
「はい、いいですよ……」
と、勇者さんに言葉を返したよ。
「あ、あの? 先程魔王が言っていたのですが、ここは本当に異世界なのですが?」
勇者さんは俺に、この
う~ん、でも?
勇者さんに、俺の生まれ育った世界日本が、異世界なのか? と、訊ねられても、どう返答をしたらよいか? と、悩んでしまう。
だって、俺自身は、今住んで生活をしてきたこの日本を一度でも、異世界だと思った事などないから、勇者さんへの返答にとても困ったのだよ。
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