第11話 おじさん、勇者、魔王さま…… (11)
「ど、どういう事も何も、この異世界に住んでいる儂の夫で……。夫は人種で普通に生活をしている男性だから魔力無い……。その上、剣すら握る事もできな人なのだよ! た、頼む、頼むよ! 勇者エヴァ──! 儂はどうなって構わないから、この人だけは助けておくれ! 頼む! 頼むよ! 儂にはもうこのひとしか残っていないのだよ……。それに死ぬ前にもう一度顔を見ておきたかったかあら、異世界ゲートを開いただけなんだよ。だから頼む! 頼むよ! このひとだけは見逃してお願いだから……」
……ん?あれ?
俺の耳にまたこんな台詞が聞こえてきた。
女性の悲哀な嘆願の声がね。
それもさ、声の主は俺を抱きしめ、泣きじゃくりながら物申しているみたい……。
まあ、魔王さんみたいだけれど?
それに、どうやら俺の身を守ろうと。自分自身の身はどうなっても良いから、俺の命を助けて欲しいと勇者さんに嘆願しているようだよ。
だから俺は、死を覚悟して閉じていた目を徐々にだが開いたよ。
すると魔王さん、俺に抱きつきながら泣き──。自身の身を挺しながら、白い甲冑を着込んだ人……。
そう、勇者さんに自身の無防備な背中を披露して、夫の俺ではなく、自分自身を殺してくれ……。
だから俺の事を見逃してくれと、嘆願を泣きながらしている姿が目に映ったよ。
えっ? 俺が魔王様の夫とは、どう言う事なのだろうか?
先程から俺の耳に何度も聞こえてきた魔王さんの台詞……。
う~ん、でも、俺には良く分からない?
実際俺の記憶の中には結婚などした事などない。
それに先程、魔王さんと勇者さんとの会話の中に出てきた次期魔王……。
娘とは何だ?
俺に子供が居ると言った記憶自体も全くないのだよ。
だから自身の身を挺して泣きながら、勇者さんに俺の命乞いをしてくれてる魔王さんに対して。
俺自身はどのように接して良いかはわからない……。
でも、魔王さんが先程から述べている事が嘘若しくは? 夢幻でないのならば、この状況は逆だよ。
娘もいるのに、妻の死なすわけにはいかないよ。
家族……。妻や子供を守るのは男の役目なのだ。
どこの家庭でもそうだと思うから俺は──。
「勇者さん、殺すなら、魔王さんではなくて俺を殺してください……。
今度は立場が逆だよ。俺が魔王さんを強く抱きしめながら、自身の身体を呈したよ。
勇者さんに魔王さんを殺すなら、俺を代わりに殺してくれと嘆願をしたのだよ。
するとさ、魔王さん、気が触れたように絶叫をあげ泣き始めたよ。こんな感じで。
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