第10話 おじさん、勇者、魔王さま…… (10)

「二人ともぉおおおおおおっ! 頼むからぁああああああっ! 喧嘩をやめてよぉおおおおおおっ! お願いだからぁああああああっ!」


 俺はこんな感じでさ、声を大にして叫びながら、魔王さんと勇者さん達二人の間に割って入ったよ!


 それも命懸け──。


 絶対に彼女達二人の争いを止めてみせるから!


 俺自身の命に代えても!


 どうせ俺は、家族などいない天涯孤独の身だから、ここで死んでも悔いはのこらない!


 それに俺自身もこんなにまでして、自身の身を犠牲にして魔王さんと勇者さんの争いを止めるのかは、良くは判らない……。


 ことはないぞ!


 どう言う事なんだよ! 魔王さん?


 俺に『ごめんなさい』と、謝罪をくれるのは……。


 それに『娘?』って何よ?


 俺自身二人の喧嘩を止め──。


 魔王さんから直接話しを聞かないと、意味が全然解らないよ?


 それに魔王さん自身が消えた後に、勇者さんが異世界の人で帰宅が出来ないでこの日本に残るから世話をお願い! と、託してきたけれど。


 異世界人って、それも何?


 俺自身、魔王さんの述べている意味が全然理解できないから、命がけで喧嘩を止める。


 ……ん? そんな事をして自分が死んだら、魔王さんに訊ねる事ができないだって?


 傍から見ててそう思うだって?


 う~ん、それは、それでいいよ!


 仕方がない……。


 だってさ? 俺が死んで二人の喧嘩が止まれば。俺自身満足だから、死んだお袋や親父の所に威張っていけるよ。


 だ、だってさ? 俺の予想が間違えなければ……。


 自分自身の妻を命懸けで守った事になるからね。


 そうなれば俺の娘か知れない?


 魔王さんの娘が天涯孤独にならなくても済むから……。


 死んだお袋や親父にあの世で威張って言えるよ!


 俺はちゃんと嫁を守って──。


 あんたら二人の孫を天涯孤独にさせずに済んだよと……。


 威張って言えるから後悔などないよ。


 そえにさ、勇者さん……。俺車で跳ね飛ばしてしまったから、彼女に本当に悪い事をしたと思っているから。これで勇者彼女は俺の罪を帳消しにしてくれると良いのだけれど?


 それと、魔王の首がいると言っていたから、俺の首を魔王さんの首の代わりに持って帰ってよ。


 だから頼むから許して、お願い……。


 俺の家族かも知れない二人の事を……。


「イッ。……ん? おっ、おい──! 待てぇえええっ! 勇者エヴァ──! おっ、男がぁあああっ! 飛びこんでぇえええっ!いっ、いや、違う──! お、男──! 普通の男じゃないんじゃあああっ! う、家の主人が間に飛び込んできたよ──! ま、間に合わない──! 勇者エヴァ──! た、頼むから戦闘を止めてくれぇえええっ! そして剣を下げてくれぇえええっ!頼むからぁあああっ! お願いだよぉおおおっ! 儂の大事な主人を殺さないでおくれぇええええええっ!」


 刹那──!


『ガン!』と、俺の耳元で、二人の剣戟の交わる金属同士の音が聞こえてきた。


 と、言う事は、俺はこの後死ぬのかな?


 と、言うか?


 もう既に死んだのかな?


 まあ、それはそれで仕方がない、最初に覚悟を決めて飛び込んできたから、取り敢えずは諦めようか……。


 う~ん、でも?


 俺にも一つだけ心残りがあるな、娘?


 ッて、魔王彼女は言っていたよな?


 もしも本当に夢幻ではなく、俺に娘がいるなら見てみたかったな?


 どんな容姿なのかな?


 俺は取り敢えずこんな事を思いながら目を閉じていると。


「えっ? う、うそぉおおおおおおっ! ま、魔王ぉおおおおおおっ! ど、どういう事なのですかぁああああああっ!?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る