第8話 おじさん、勇者、魔王さま…… (8)

(あ、あなた、さようなら……。最後に会えて嬉しかった……。これで妾も思い残す事もなく他界する事が可能です……。本当にお元気そうで良かった……。あなたのお元気そな顔も最後に見る事が出来たし、話も少しばかり出来たから。妾は嬉しかったです……。まあ、あるのか? ないのか? 解らないですが、先にあの世でお待ちしていますね……。でッ、今度こそ、あの世では妻としてちゃんと尽くしますから……。あっ? そう言えば言い忘れていましたが、向こうの世界に置いておくと、妾達の娘に害を催すかも知れないので、ついついと一緒に連れてきてしまった勇者なのですが。この異世界では一人では生きて生活を送る事はできないと思うので……。彼女を妾の代わりに一生掛けて償い養っておくれ、お願いします……。愛しているよ、あなた……。先立つ不孝をお許しください……)


 ……ん? 何今の声は?


 俺の脳へと直接響き聞こえたような気がするけれど。


 う~ん、どう言う意味なのだろうか?


 と、俺は思案をしている。


 で、でもね、俺自身?


 そんなに深く悩んでいる時間はないのだと思う?


 俺は相変わらず土下座をしたままで呆然としている……。


 でも俺の耳には先程からこれだよ?


〈ガン! ガン! ガシャン! ガン──!〉


 目に見えない速さで、何かしら大変な事が起こっている気がする?


 た、多分? 金属と金属とが重なり、交わり、ぶつかり合う音が聞こえてくるのだよ。


 もしかして? 魔王さんと勇者さんが争いを行っているのかも仕入れない?


 と、俺自身思うのだが?


「死ねぇええええええっ! 魔王ぉおおおおおおっ!」


「……チッ! ウグ! クッ……」


 せ、刹那……。


 二人の声──!?


 勇者さんの大変に大きな勇ましい声が聞こえてきたと思ったら。


 ま、魔王さんの危ない……。


 傷を負った声なのかな?


 何かしら大変に不味い声が漏れ聞こえたよ。


 俺の耳にね……。


 最初土下座の状態──。


 俺自身も深々と頭を下げていた状態だったから。頭をあげた瞬間は、二人の女性がいないから、俺自身が『夢幻?』を見ているのと思ったけれど。


 先程の俺の脳へと直接聞こえてきた声……。


 それと、金属同士の激しくぶつかり合う音に、今の勇者さんの声と魔王さんの声とがちゃんと俺の耳へと聞こえてきたから『夢幻』ではないみたいだね。


 それにさ? 良く凝視して観察をして見ると──。


 時々光物がキラリ! と、俺の目に映る……。


 と、言う事は、二人の女性の方達は、お互いが光物!?


 それも銃刀法違反にでもなりそうな、現物武器を持ち使用しながら戦闘をしているのだろうと思われる?


 う~ん、確か? お二人は俺が車で跳ね飛ばした筈だよね!?


 と、素直に不思議に思う。


 だから尚更『勇者』と呼ばれていた女性が、『魔王』 と呼ばれていた女性に告げた。魔王貴方はあれぐらいの当たりの衝撃ならば平気の筈?


 と、言った言葉が本当なのではと、俺は真剣に思う。


 それに俺自身が、超が付くほどビックリしているのは、車で跳ね飛ばした二人がね。映画やアニメ、マンガ……。


 その他にもライトノベルや童話、ゲームの世界観のように空中に飛び──俺の目では捉えられないような速さで、剣戟を繰り返し戦闘を行っているのが不思議でならないよ。


 だから先程の俺ではないが?


 最初は夢幻? なのかな?


 と、思ったぐらいだから。


 でもね、俺は直ぐに夢ではないと気づいたのだ。


 だって俺自身の足は、今迄正座をして土下座をしていた為に、足が痺れて動かないでいるから。


 これは夢の中の出来事では無く、現実に俺の目の前で起きている出来事なのだと確信が出来たよ。


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