第7話 おじさん、勇者、魔王さま…… (7)

 う~ん、どうやら、黒い甲冑を着込んだ女性の方は、白い甲冑を着込んだ女生とは違って、身体に傷を負ったみたいだよ。


 だから俺は、どうしたらいいのだろう? と、思い始めたよ。


 だ、だって、俺が車で跳ね飛ばした相手は二人とも女性だからね。


 特に今も俺が述べた通りで、黒い甲冑を着込んだ女性は、顔にも傷が入っているらしい……。


 だから傷物にした俺に生涯をかけて養い尽くせと、要求してきたから。


「あっ、はい! 分かりました……。ほ、本当に申し訳ございません……。生涯かけて償いますから、どうかお許しください。お願いします……。ほ、本当に申し訳御座いませんでした……」


 俺は慌ててまた謝罪をしたよ。何度も地面に頭を当てながら……。


 ど、どうしよう? 彼女はもう二度と結婚出来ないかも……?


 と、言うか?


 彼氏や旦那さんとか居たらどうしよう?


 自分の彼女や妻が顔の大変な傷でも負ったら、絶対に自動車を運転していた者を心の底から恨むよな……。


 と、思うと本当にどうしよう?


 誤って住む問題でもないし、お金で済む問題でもない……。


 本当に心の底から謝罪をするしかないよ。


 でッ、家族や彼氏にも謝罪をしに行こう……。


 許して頂くまで何度も、何度も、俺が全部悪いのだから……。


「ちょ、ちょっと、頭を上げて下さい……。本当にどこも痛くはないですから……。それにこの女……。魔王が言う事など気にしなくてもいいです……。知らぬ顔をしててください……」


 ……ん? あれ?


 先程も呼んでいた名前だけれど?


 魔王って本当に変わった名前だね?


 キラネームにしてもかなり風変わりな名前……。


 う~ん、良く、名前を付ける時に認可が降りたな?


 と、俺は思いながら。


「い、いいえ、そういう訳にはいきません……。貴方も含めてですが、本当にすいません……。お二人は僕が出来る限り、誠意を込めて償います……。それも一生掛けて……。だから本当に許してください。お願いします……」


 俺は黒い甲冑を着込んだ女性だけではなくて、白い甲冑を着込んだ女性にも心から謝罪の言葉を述べたよ。


 だから俺が起こした罪を許して欲しいと……。


「そうか! そうか! 儂を許してくれるのか? あなた……。本当にすまん、すまんかった……」


 ……ん? あれ? 魔王と言う名前の女性、俺に謝罪?


 う~ん、意味が解らん?


 俺は思わず困惑……。


 だから彼女に俺は、「お、あの……。僕に謝罪ってどう言う事なのでしょうか……?」と、自身の頭を傾げながら尋ねたよ。


 すると、魔王と言う名の女性は慌てふためきながら。


「い、いや、あ、あれよのぅ~、只お主の事を本当にいさぎの良い、晴れ晴れとした気持ちを持つ、良心的な殿方だと思っただけじゃよ…… 」


 と、言葉を俺に述べ終えると、笑い始めた。


 それも作り笑いと言うやつ?


 だと、俺は思うのだが?


 まあ、とにかく魔王と呼ばれていた女性は、どうやら俺の誠意が伝わったのかな?



 俺に対してかなり好印象なのだよ。


 だから俺自身も『ほぅ……』と、して安堵したよ。


 でッ、その後魔王と呼ばれた彼女に、「あ、あの、魔王さん?」と、声をかけた。


「ん? な、なんじゃ?」


「あの、魔王さんには、家族や彼氏などはいないのですか?」


 俺は魔王さんに声をかけ訊ねたよ?


 先程も俺が言葉を漏らした通りで、もしも家族や彼氏……。若しくは? 旦那さんがいるようなら謝罪をしないといけない。


 女性の大事な顔に傷をつけた俺だから……。


「ん? 何でそんな事を儂に訊ねる?」


 すると魔王さん、不思議そうな口ぶりで俺に訊ねてきたのだよ。


 彼女の顔は頭鎧を被っているので良くは解らないが?


 声を聴く限りでは悩んだような声色だと俺は思うのだよ。


「い、いや、あのですね……。貴方のお顔に傷をつけたようですから、家族の人達に僕は会って謝罪をしたいのですが? どうでしょうか?」


 まあ、こんな感じで魔王さんに恐る恐る訊ねてみたよ。


「えっ? う、うぅ~ん、娘が一人と夫がいる……」


「そ、そうですか、で、では、あの、魔王さんの家の方を教えて頂けますか? 旦那様と娘さんに謝罪をしたいので……」


「い、いや、謝罪など別にいい……それと今娘に合わす訳にはいかん……。それに主人の方も別に良い! 本人が良いと言っているようだから……」


 俺が魔王さんの家族……。旦那様と娘さんに謝罪をしたいと願いと申し出ると、いきなり魔王さんの声色が急変した。


 何故だか解らないけれど?


 とにかく慌てふためいた声色だよ。


 魔王さん本人がどうして良いか、解らない感じなのかな?


 俺はそんな事を思いながら。


「それでも、やはり家族の人達に僕の口からちゃんと謝罪をしないといけませんから……」


 と、述べたところで。


「はぁあああっ! き、貴様ぁあああっ! 魔王ぉおおおっ! 何をウソをついていいるのだぁあああっ! 貴様には夫などいないだろうに──! それに先程から貴様の話しを聞いていると──。この善意のある男性を先程からやたらと口で脅してぇえええっ! やたらと色々と要求をしているようだが、魔王! 貴様は、あれぐらいの衝撃ぐらいでは、掠り傷一つ出来ないであろうに……。先程から嘘偽りばかり言いおって、この殿方にかわり私が貴様を成敗してやる──!」


 こんな感じで、白い甲冑を着込んだ人が、俺と魔王さんの会話に、憤怒しながら割り込んできたのだよ。


 だから魔王さんの意味不明な言葉?


 今娘と俺を合わす訳にはいかないと、言った意味の言葉の真相を聞く事が出来なかった。


 それに魔王さんの旦那様も納得している、って、どう言う事なの?


 今この場には俺達三人しかいないのに?


 今の魔王さんの話しだと、この場に魔王さんの旦那様いるような言い方だよね?


 それにさ、白い甲冑を着衣している女性も魔王様には、旦那様はいないと言っているのに……。


 どう言う事なのだろうか?


 俺自身が今度は困惑をしてきたよ。


「はぁああああああっ! 嘘など儂はついていない──。車の衝撃はあれはあれで痛かったぞ! 儂の顔に傷が付いたかもしれん──! それに儂に娘がいるのだから、夫がいても可笑しくはないではないかぁああああああっ!」


「じゃ、あれかぁああああああっ? 本当の魔王は貴様ではなく夫が魔王なのかぁああああああっ!」


「えっ? い、いや、ち、違う……。ま、魔王は儂じゃぁあああっ! 夫は関係ない──!」


「ふん! まあ、良い! どのみち魔王! お前を処分したら次は次期魔王である貴様の娘を処分してやる……。でッ、その後は貴様の夫いう男を草の根の分けても探し出して処分をしてやる……」


「はぁああああああっ! そん事をさせると思うか? 勇者──! 貴様の方こそここが墓場じゃ、覚悟せい──!」


「あああ、くるならきてみろ返り打ちにしてやる──!」


 う~ん、何かしら? 二人……。


 魔王さんと勇者……。


 えっ? ええええええっ!


 ど、どう言う事だろう?


 思わず俺は心の中で叫んだが……。


 魔王と勇者って?


 よくある漫画やアニメ、映画の世界だよね?


 もしかして? 本当に実在する人物なのかな~?


 それも女性……。


 そんなお二人の女性、土下座をしている俺の目の前で口論を始めたと思ったら。


 今度は俺の視界から消えた?


 でッ、俺の耳には──。


 〈カン! カン! カン!〉


 剣戟の交わる金属音が聞こえてくる……。


 だから俺はどうしたら良いか? と、土下座をしたまま悩み始めたよ。





 ◇◇◇◇◇

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