第2話 生きる意味ってなんだろうと誰しもが考える時がある
私達が有機生命体である時点で、その意味付けは有機生命体の中でしか決められない。有機生命体を超えて、神様的な意味を持ったり、物理法則を変えたり、あるいは超常的な何かの意味を持つことはできやしない。私達はどこまでも人間で、人間だから、人間を超える意味を持つことは出来やしない。
そこで、2通り考える人がいる。
人間としての生命しか全うできないのであれば、それは小さな存在に過ぎず、生きる意味なんて無価値だという考え。
逆に、皆と同じ人間だからこそ、そこには”人間的な”意味が生まれて、素晴らしいことなんだと。
また、こういう価値観もある。
永続的なもの、恒久的なものは価値がある。刹那的なものは価値が低い。人間の一生は短いから、人間というものは長大な寿命をもつものや、恒久的な事象と比べて価値が低い。
これには異を唱えたい。
そもそも人間的である価値観とはどういったものか。
数学の公式は素晴らしくて、食べたら無くなってしまう美味しい料理は価値がないのだろうか。長大な寿命を持つ天体は素晴らしくて、綺麗に咲いては枯れてしまう花は価値がないのだろうか。立派な数学の公式を証明しても、天体の寿命がいかに長かろうとも、目の前の小さな子を喜ばせるのは、父母の作った料理であり、食卓に飾られた可憐な花だろう。食べたら無くなってしまう料理の見た目に、人はどうしてそんなに拘ると思う?
・・・その瞬間に感動があるんだ。その刹那の感動に大きな価値を見出すのだ。
その感動を大事にする生き方って、人間らしい生き方だと思うんだ。
生きる意味ってなんだろうと考える時には決まったパターンがある。他者を良い方向に導いている人や、社会を良い方向に変えようと努力している人は、自分の生きる意味について悩んだりしない。先人達の努力を学んでるし、自分の中に大義や使命感が芽生えているから。
悩んでいる人は、自分が社会の中で役に立っているのか疑問に思ってる人や、社会との関係を極力絶って一人で生きてる人だ。
残酷な真実を突きつけてしまってすまない。
生きる意味は人との関係性の中に見出すことができる。
人の役に立っていれば、自分に価値を見出すことができる。友人と、両親と、子供と良い関係を結べられていれば、彼、彼女にとって、あなたは大事な人だ。それだけで生きる意味とすることができる。
ここまでは一般向けである。ここで、特殊な考え方を提示しよう。私はこれらとは違う、超然的な態度をとっていて、生きる意味を他者との関係性に求めることはいずれ卒業しなければならないと考えている。
他者との関係性の中に自分を見出すということは、悪い言い方をすれば、他者に対して媚びた生き方をしているということだ。両親に媚びている。友人に媚びている。子供に媚びている。恋人に媚びている。社会に対して媚びている。あまつさえ自分自身に対しても媚びている。
私みたいに、それらから、いつか卒業したいと思う者はいないか?もっと違う、本物か、真理か何かもっと別のものを手に入れたいと考えたことはないか?
私は私が私であることをまず許す。常に私であることをまず許す。協調性がないと批難されるかもしないし、思いやりがないとなじられるかもしれない。それでも、私が私という態度でいることを自分自身に許してあげる。失うものを多いかもしれない。でも、得るもので勝負するのが人生だろう?
他人の批難を一切気にせず、矛盾したことも平気で行う。理論からも開放される。そもそも私は正義の味方ではない。助けられる人が居たとしても、いつでも、どこでも、何度でも助けるわけではない。この人には親切にして、あの人のことは知らんぷりという社会的不正義を平気で行う。
自由な生き方だ。人との関係性の中に生まれる生きる意味というものを無視している。
もし、君たちもそういう生き方を目指すのであれば、芯としてこれは持っておくといい。日本の道徳の根幹をなしている考え。古くは五行、今は西洋の人権思想と融合し、日本人独特の道徳を形成しているもの。武士道だ。
自由であっても道徳は持たなければならない。武士道はつまるところ、卑怯を憎む心である。人との関係性という鎖から解き放たれた今、ふわふわと我らは宙に漂う存在。すべてが許されているが、それでは心許ない。武士道は哲学者カントの定言命法にあたる。つまり、”ならぬものはならぬ”ということ。そこには神様や仏様は登場しないし、理論も理屈による説明もない超越した教えだ。
この武士道を学び、大切にしながら、時には前の話で登場した良心的配分を組み合わせて、上手く生きていくと良い。
こういう生き方の再構築を行えば、媚びる人生とは違う、もっと前向きな生き方を得られるよ。
生きる意味があろうとなかろうと関係ない。私は私の生き方をするだけだ。
サラマン
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