第九夜


 さようなら、未来——



 生まれ変わったら、今度こそ、本当の意味で幸せになってね。



 ————発動、


 出来ない……駄目……私には殺せない。

 未来みく未来みらいを殺せない。


 許してくれるかしら、きっと、膨れてしまうだろう。貴女をおいて消える私を、恨むかも知れない。


 けれど、殺せない——


 その時、


 屋上の扉が開いた。振り返ると、未来がいた。


「プル! 約束、した!」


「未来……なぜ……」


「約束っ……未来を殺す約束っ……責任、取ってくれるって、言った!」


 あぁ、何故来てしまうの……その顔を見たら、それこそ殺せるわけない。

 私が地面に膝をつくと、未来が駆け寄って来ては、私を抱きしめた。震えている。


「プル……思い出して。貴女はもう、世界を」


「嫌ぁっ……言わない、で……」


「貴女はもう、世界を殺したの」


「……み、く」



 崩れていく。私の見ていた世界が、音を立てて、硝子が破れるように、粉々に砕け、死んでいく。


 嘘だ。私は、未来と共に生きていた。


「目を覚まして、プルは、ちゃんとお仕事出来たんだから。いつまでも夢を見てちゃ駄目だよ」


「未来、嫌だ、消えないで!」


「ありがとう、プル。未来を殺してくれて、ありがとう。貴女と過ごした一年は、とても楽しかった。もう思い残すことなんてないよ」


「お願いだから、未来、消えないで……ごめんなさいっ、ごめんなさい……私はっ」



 私は、未来を殺した——



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