第六夜


 秋が訪れた。紅葉が街を彩る季節。

 儚く落ちる枯れ葉に、人々を重ねてみる。


 残る術式は三つ。そのうちの一つは、海に面した水族館の中。

 今日は朝からお弁当を作って、水族館デートをする。未来も張り切っているし、秋の気候なら、身体の弱い彼女でも安心。


 でも、人間は不思議ね。

 魚を見て何が楽しいのか、私にはわからない。お腹が空いてくるくらいかしら。

 今夜は焼き魚で決まりね。


 未来は子供みたいに楽しみにしているし、未来と一緒なら、何をしても楽しいわ。


「さ、行きましょうか?」


「うん」


 やはり、彼女は制服姿だ。

 似合っているので、私は別にかまわないけれど。


 ——


 二人で魚を見て回ったわ。未来は子供みたいにはしゃいでいる。私の手をしっかり握って、早く次に行こうと、催促する。


「見て、蟹がいる」


「ほんと、美味しそうね」


 とても楽しい一日だった。

 未来の笑顔を、沢山見ることが出来た。


 来年も、再来年も、ずっと、こうしていたい。


 叶わない願いは、自身を苦しめるだけなのに、私は、その衝動を抑えられていない。



 観覧車に乗った。


 夕日が綺麗だ。胸が痛くなった。


「来年は……ちゃんと殺してね、プル」


「未来……」


「そんな顔、しないで? 未来はね、プルに生きていてほしいの。消えないでほしい。だから、三度目の正直は必ず。未来はもう、十分に幸せだから」


 私も、幸せよ。

 そして、私も貴女に、生きていてほしい。

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