第五夜
七月半ば、——梅雨も明け、カラリした夏が訪れる。蝉も鳴き始めた。
私は仕事の帰りに、術式を施す。
今回は一人で。未来は家で伸びているから。
こうして各地に滅亡術式を施し、約一年かけて下準備をする。私が初めてここに来た時は、これを一人で全てこなしていた。
そして、廃ビルの屋上に仕掛けておいた発動用の術式を起動させるため、向かったその場所で、
ピピピーヒャラポン、ポン!
あ、未来からのメール。
『アイスーー』の一言。
仕方ないわね、帰りにアイスを——
ピピピーヒャラポン、ポン!
『アイステル、なんちって』
これが、俗に言う親父ギャグ、ね。親父に言われるのと、未来に言われるのとでは、天地の差だけれど。
私は、五文字で返信した。
『ワタシモヨ』——
帰ったあと、未来と一緒にアイスを食べた。
身体が芯から冷えていくのがわかる。未来は頬にクリームをつけて嬉しそうに笑う。
私は、ソレを吸いとる。未来は細い身体を弾ませて頬を赤らめた。あぁ、かわいい。
アイスより、私は貴女を、
私は貴女を、失いたく、ないな——
それは、叶わない望み。
私にはもう、後がないから。来年、失敗すれば、私は消えてしまうから。
滅亡の概念、消却の魔女として生まれた私が、失敗を許されるのは二度まで。
三度目は、自らの消却を意味する。
それは同時に、未来のいる世界を、殺さない選択でもある。この、腐った世界を、
生かす選択……私はあの子を、世界を殺せるのだろうか。私は——
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