第三夜
今日も私は、働き、日銭を稼ぐ。
そうしなくては、生きていけない世界だから。
この世界は、本当に忙しなく、息苦しい。
キラキラとした表面の皮をめくると、その裏には深い、深い、闇が広がっている。
そして誰もが、その闇を恐れ、ハリボテの世界にすがり生きる。それはまるで、活きていない。
だから、私が来たのね。
間引かれるべき世界。その使命を負った、魔女。
私の名は、————
「プル? どうかしたの?」
未来……びっくりした。
だって、突然私の顔を覗き込んでくるんだから。
幼い顔立ちのわりに、色気のある肉厚な唇が、私の射程圏内で無防備に帆を描く。
——そっと、触れてみる。
とても柔らかで、甘い味がした。きっと、冷蔵庫に隠していた私の大好物、プリンを滑り込ませたのだろう。でも、許す。
未来の身体の力が抜けた。私に、身を委ねている。かわいいな。夕飯の支度どころじゃないよ。
息継ぎのため、唇を離す。
「プル、まだ明るいよ」
「すぐに、暗くなるわ」
そうだ。明日はお休み。
未来を連れて、あのテーマパークに行こう。
来年、この世界を滅ぼすための、
——滅亡術式を施すために。
忘れてはいけない。
私の使命、私の役割、私が為すべきことは、世界の選別と間引きであることを。
おやすみ、未来。今度こそ、貴女を楽にしてあげる。だから、もう少し我慢してね。
「プルの身体、柔らかくて気持ちいいな」
「プルプルギスだから」
「だから、プルプルなんだね」
今は、私の胸でおやすみ。
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