第二夜
日中は、仕事で家をあける。
昨日、お別れをしたはずの日常、——何食わぬ顔で繰り返す日常、消えていたはずの日常、
私はスーパーで買い物をした。食材の買い足しだ。
もう、来ることはないと思っていたスーパー。鮮魚コーナーのおじさんが、私に声をかけてきた。
結局、お造りを二パック、購入した。
私は生の魚はあまり好きじゃないけれど、未来の大好物だから、——だから、購入した。
玄関を開けると、未来が制服を着て大の字で眠っている。白と紺のシンプルなセーラー服姿。
「未来、学校に行って来たの?」
「頑張ってみたけど、このザマだよ」
女の子なのに、だらしない格好。頭がこちらを向いているのがせめてもの救い。
でも、私は窓側に映る、そちら側も嫌いじゃないわ。無理しなくていい、行きたくなければ、私の隣で生きていればいい。
「そう。未来の好きなお造り買ってきたよ。スーパーのお魚屋さんの押しに負けちゃって」
「わーい、やったぁ! お魚屋さんの鉢巻き親父、グッジョブ!」
かわいい子。お造り一つでこんなにはしゃいで。
何故、この子は、——
何故、あの日、あの夜、私は未来の手を取ったのだろう?
助ける意味なんて、無かったはずなのに。
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