第149話 スポーツ資料の検品作業

「総額20万程の資料がこちらです」

「えっと……請求書を提示してくださればヌーリエ教会で対応させていただきますが……」

「え、ホント?一応印刷しといてよかった!」

「絶対こうなることわかってた流れですね……まぁ一応受理して後で実際資料として運用できるかを検討した上で正式に予算として受理しますので」

「あ、そこは大丈夫だと思う。ルールブックは地球の最新国際ルールが記載されてる本をコーイチお父さんに見繕ってもらったし、過去の凄いプレー集とか試合とかの映像はルースお父さんに厳選してもらったから」

「それで日本円で20万も使ったんです?」

「スポーツと一言で言っても数が凄く多いからね。むしろ映像とかルールブックがない競技すらあったから、それは基本どういう形態で運用されているのかっていうのをネットで調べてもらったよ。もちろんそれは計上してないから安心してね」

 スーさんが呆れているけれど、でもまぁ最悪を想定してた分最悪に転がらなかったっていうのは結構テンションが上がるものなんだなって絶賛実感している。

「ともあれこの転送陣許容ギリギリのコンテナの中身を吟味からですか……確認が取れ次第あちらの方々に説明会を順次進めます。その説明には月読さんにお願いしたいところですが……」

「構わないわよ。カバーと中身が同じなら問題なく説明できる」

「学生相手にもやってたしな」

「講師ってバカにできないお小遣いになるのよ。ただ私1人というわけではないのでしょ?」

「当然です。資料作りをするにも時間が必要でしょうし、雑用程度のものを手伝う人に関しては月読さんの方で選んで頂いて構いません」

「了解。それじゃあ狼、手伝いなさい……それとヨシュア君と取り巻き2人もお願いするわ」

「え?」

 唐突にヨシュアさんがご指名を受けて驚きの『え』以外言葉を出すことなく、そもまま月読さんたちに引きずられていってしまった。

「イネさんは届いた品物の調査を手伝ってください。注文した方がいれば多少楽になりますから」

「うん。お父さんたちがあれこれやらかす可能性が否定できないしいいよ」

 ルースお父さんが茶目っ気発揮してアダルトなやつが混じってる可能性が完全否定することができないからなぁ……コーイチお父さんかボブお父さんが一緒にやってれば大丈夫だと思うけど、それでも20歳超えた記念とか言ってやらかしそうだしね、それに意図せずに中身がお引越ししてる可能性はかなり高いので、義理とはいえ娘としてそこは責任を持たなきゃという使命感のようなものがあるしね。

「そのようなものを見つけた場合、私たちに譲って頂ければとは思いますが……」

「スーさん見るの?」

「私も一応は夢魔ですので。知識がなくとも満足させることはできますが、知識があれば更に上位の満足を与えて差し上げることが出来るようになりますので」

「勉強熱心だねぇ」

「夢魔が持つ唯一の武器でもありますから」

 唯一ってのは絶対違うと思うけどね、うん。

 ともあれこれは夢魔の人たちとイネちゃん、そしてその手の画像や映像が大丈夫な人がいれば手伝って貰うってところかな……性的なものって本当に人を選ぶからデリケートなのに、イネちゃんはお父さんたちのあれこれで知識先行で慣れちゃったんだよなぁ……ステフお姉ちゃんも似たようなものだったけどさ。

 ただまぁ大陸の性的な情報って結構おおらかだったりするし、よほど隔離されてたりしなきゃ大丈夫なのかもしれない。

「というよりも普通に基礎学習の範疇ですからね。むしろ教えずにいて夢魔向けの店舗に迷い込んだらそれこそ大事になりますから」

「ですよね」

 何でもかんでも臭い物に蓋なんてしたら正しく対処する術まで学べなくなるからってことか……ということは普通にロロさんたちを頼っても問題なさそうだね、警備循環がない時に手伝ってもらうとして……。

「えっと、お二人は一体どういう内容の会話をしておられるのでしょうか、スポーツに関係することですよね?」

 耐性がなさそうなのにガッツリ関係者すぎて大変なことになりそうなリオさんが混じっているという大問題が目の前の機器として存在しているわけである。

 まぁリオさんだって男の子なわけだし、全く耐性というか興味なしってことはまずないだろうけど……どういう反応を示し、それがどういう問題に発展していくのかがイネちゃんの人生経験では予想ができない。

「いずれ知ることになる事柄の話ですよ」

 スーさんが全力でお茶を濁す答えをした!嘘はついていないし、間違っていないわけだからベターな回答に思えるね!

「まぁ……はい、いずれ知ることになることですね」

 警備のシフトじゃないウェルミスさんもフォローしてくれてるけど、内容はスーさんとまるで変わらない……いやウェルミスさんはちょっと赤面気味だから危ない部分もあるけれど、とりあえず全会一致でその答えに近づいているわけだ。

「間違いなく、いずれ把握できることだよね」

 というわけでイネちゃんもその流れに乗っかることにする。

「はぁ……なんだか皆さん隠していませんか?」

「何を隠していると思うのですか?」

 即答するスーさん、この手のジャンルでは圧倒的に頼れる。

「それはわかりませんが、どうにも意図的に何かの事柄を隠された感覚が……」

 リオさん、やたらと食い下がってくるな……スーさんに聞いたところリオさんの年齢は青少年からギリギリ成人するかどうか、少なくとも滅びた世界と大陸では成人年齢であるらしいけれど、イネちゃんに一目惚れして更に一途でいられるくらい純粋なわけだし、もう少しその無垢な感情を大切にして上げたいところ。

「ともあれ検品、始めましょう。問題なしと判明次第リオさんにはあちらに運んでいただきますので」

「スーさんは行かないのですか?」

「適材適所で考えれば私はこちらのほうが適任ですから」

 リオさんの質問に少しの間も開けずに返事をするスーさん……それはそれで怪しさが増える気がするのだけどいいのだろうか。

「再生機器とモニターは既に教会で準備しております。AVオーディオビジュアル室にてすぐにでも始めましょう」

「なんでそんなに急いでるんですか!いや急ぐのは問題ないんですが凄く気になります!」

 なんで防音室のことをわざわざ略称がド直球になりかねない言い方をするのか。

 いくらリオさんが知らないとは言え……スーさん楽しんでたりしちゃいないだろうか。

 まぁここで同じことを延々と続けるのもアレだし、とりあえずイネちゃんは近くにあったダンボールをふた箱程持って防音室に入って電気を点ける。

 防音室は注文してから急いで作っておいたのだけど、届いた量が量なだけに後で倉庫を併設しておかないと防音室がそのまま物置になりかねないので、数点確認したら倉庫を作ろう。

「それでどの機械でこの中身を見ることが出来るのですか?」

「あぁ綺麗に光を反射する方は触らないでね、そっちでデータを読み込むから。まぁ柔らかい布で拭けばいいから、後でリリアに頼んでおかないと」

 そりゃDVDとか知らない人たちは挟むように持っちゃうよね、そっちのほうが持ちやすいもん、イネちゃんうっかりしてた。

「ごめんなさい!……もう見れないですかね?」

「あぁうん……この程度なら大丈夫じゃないかな。とりあえず再生して行こうか、電源を入れてこのボタンを押せばこれを置くトレイが出てくるので、おいてもう1度ボタンを押すかトレイを軽く押せば収納して読み込みを始めてくれるよ」

「地球の機械は通信機器以外は殆ど触る機会がなかったので……ありがとうございます」

 PDAが高価だし、機器としてはかなり精密機械な上に技術分野の重要な基礎満載ってことから分解も困難なスマホが結構お手軽に教会かギルドで買えるんだよね、むしろ最新機器が入らないのに内蔵メモリやらが強化増設されているので、大陸で2・3世代前の機種を買った方が圧倒的なコスパになるのだけど、ウェルミスさんってスマホ持ってたんだなぁ。

 そんなことを思いつつ、イネちゃんとウェルミスさんはほぼ同時にDVDを再生して……。

「モニタの電源入れるの忘れてた。映るはずないじゃん」

「あ、遅いわけじゃなかったんですね」

「遅れてすみません」

「むぅ……本当に隠し事ないんですかねぇ」

 モニタの電源をいれたタイミングでスーさんとリオさんが入ってきて、扉が閉じた直後……モニタにはスポーツとは思えないものが流れ始めていた。

「……いやぁ1発目から大当たりとかないわぁ、しかもラベル偽装までしてたとかないわぁ」

 このあと、リオさんが赤面して鼻血を出しながら倒れたりしてめちゃくちゃ大変だった。

 今度帰った時にルースお父さんには冷たく当たろうと心に決めた瞬間なのでしたとさ。

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