第134話 ロマンの塊での大気圏内戦闘
『ビーム着弾、すぐ!』
「フィールド張ってある!念には念を入れて複数枚!」
機械仕掛けのドラゴンから放たれたビームはイネちゃんの乗っているロボットが展開した対ビームフィールドをいろんな方式で複数枚展開していたおかげで初撃は周囲への被害を含めて防ぐことができた。
「ビームが止まったら即反撃する……あの大きさなら耐えるはず!」
左腕の大口径2連装ロケットキャノンをビームが撃たれた方向へと銃口を向けて、ビームの出力が弱まったタイミングで射撃する。
『ミスリルの準備もできたけど……できれば可変してジェットブースターの推進力で飛んでね』
「了解!」
ロケットキャノンを発射した直後、ロボットを可変させてブースターに火を入れて巨体を浮かばせるだけの揚力を確保する。
地球の物理学、航空力学からすれば明らかにナンセンスな重量と形状のロボットだけど、大陸の、しかもヌーリエ様の力で運用しているロボットであるのならその辺の物理法則とかを一定範囲で無視はできる、のだけれど、流石に全部無視することはできないので推進力を確保して揚力を得ないと飛ぶことは難しい。
まぁミスリルを飛ばしている、いつもイネちゃんが生身で空を飛ぶのに使っている架空金属粒子であれば文字通りその大半を無視はできるわけだけど、それは今ミスリルを飛ばしたりするのに使っているのでロボット本体を飛ばす分が足りていない。
『ミスリルを作りすぎた』
「一度こいつにくっつけておけばいいよ!」
『質量が増加するけど……わかった、こいつに使える分だけくっつける!』
ミスリルをロボットにくっつけることで、機体の質量はその分増えるけれども架空金属粒子の特性でかなりの部分の重量や質量を低減することができるようになるのでむしろ機動力は上がる。
とはいえ相手が金属で恐らくは有人、しかも無力化狙いとなればミスリルはすごく有効な手段なので周囲に金属があまりない状態であれば追加で生成できない状況なのであるものを有効活用しないといけない……こういう状況なら殲滅の方が圧倒的に楽だし残弾も気にするは気にするけれどそこまで重要な項目にはならないからね、いざとなれば一度着地すればいいだけだから。
「勇者の力で制御する以上は自分の体の延長として……やっぱ自分の体にない器官はどうしても感覚としては違和感が出ちゃう」
『使いこなせてるなら問題ない』
まぁイーアが冷たい感じにそっけなく返してくる程度には今の状態で目の前の機械式ドラゴンを撃退、もしくは完全無力化しないといけないことには変わりないので、一気に懐に入って接触するのが最もてっとり早いし架空金属粒子とブースターを使って一気に近づく。
当然ながら相手もこちらが接近戦に持ち込もうとしていることは理解しているようで偏向ビームを発射して全方位からイネちゃんに向けて閉じ込める形で攻撃をしてきた。
『変な曲芸しているから気にする必要はない』
「分かってる」
最初に撃たれた極太ビームと比べたら圧倒的に出力の劣る偏向ビームは、イネちゃんのロマンの塊であるこの機体には多少の焦げ目をつける程度で、爆装しているところも念入りに防御能力を持たせてあるので被弾に気にせずに速度をあげる。
爆装部分以外はさすがの重装甲と、ミスリルをくっつけたことによる質量の増加も合わさってこちらの加速は徐々に増加していき、架空金属粒子による空気抵抗低減の効果もあって数回の被弾の後に
『相手はかなりの巨体だから、2本程度じゃ……』
「場所の把握だけのつもり。それにミスリルが1本でも刺さってくれれば居場所を見失うことはなくなるから」
『ま、どちらにしろ打ち込む必要はあったしいいけどね。ただあちらの装甲性能とかまるで不明な状態だから、無駄になることも想定しておいて』
「うん、わかってる。最低限だから」
隙間が完全にない。
なんてことは流石に駆動しているからないだろうけれど、ミスリルが当たる場所次第では無意味になる可能性だって十二分に存在しているからね。
確実性を優先するのであれば、やはりイネちゃん……最悪でも機体のどこかであの機械式ドラゴンに抱きつくとまでは言わないにしても、触れる程度はしないとイネちゃんが掌握するのはかなり難しいのは確かだと思う。
『イネ、この機体ってどのくらいの大きさだっけ』
「今必要かな」
『相手との相対距離から正確な大きさを算出したい。何度かミスリルが避けられてるっぽいし、大きさと機動力を測りたい』
「24m、アグリメイトアームは15mくらいだけど、イネちゃんがやりたかったのはコーイチお父さんの持ってたアニメに出てくるロボットのロマン全乗せだったし」
『了解……レーザーと音波の反射、それに相手の速度とこっちの速度を考えると……ちょっと面白くない数値になりそうかな』
「どのくらい?」
『最低でも100、計算間違いを加味するとそれ以上』
「それは……」
『うん、ミスリルが足りない。動力にピンポイントでぶち当てて掌握できればいけるとは思うけど、真正面の一番分厚いだろう場所以外は基本回避されてるからね』
100m級でこちらの攻撃を回避する時点で相当なものだけど、ミスリルに関してはこちらの勇者の力での制御で機動パターンとかは存在せず、更に言えばこちらは掠ればそれで十分であることからあまり狙うということをしていなかったとはいえちょっと首をひねらざるを得ない事態。
こちらは24m級、相手は最低でもこちらの4倍のサイズを誇っているわけで、更にミスリルは小さく、1本3m程度で運用しているため100mの巨体であるのなら構造維持の都合装甲厚も相応だと想定した場合無視しても問題ない……というか実際正面の胸部装甲に当たったときは液体金属であるミスリルが相手の内部に侵入することができないくらいに機密処理がされているのだ。
とはいえビームを発射するための機構や空を飛ぶための機構、それに関節やまるで生き物のように動いている翼を、それこそ完全機密処理をするとなると100m超というのは少々現実的ではない気がする。
『なら結論は1つ、あれもこっちに負けず劣らないだけのファンタジーだってこと』
「SFじゃなく!?」
『科学的説明ができないのならファンタジーに分類したほうが考えるのが楽になる』
「思考放棄だ!……でもまぁ、相手が金属であるのなら!」
『そういうこと。こっちも相手を上回るだけのファンタジーだってことを教えてやればいい……久しぶりに連携、行くよ!』
「じゃあ今回イーアが反射担当?」
『イネの方がそれは向いてる。私はあのメタルドラゴンに接触できる最速最短を考える!』
「了解!じゃあ……架空金属粒子を圧縮解放して一気に行くよ!」
イーアとの相談を終えると私はドラゴンの周囲で牽制兼必殺の一撃を狙っていたミスリルをこちらに戻して機体と同化させると、ミスリルを架空金属粒子に一斉変換してブースターノズルと機体下部に集中させ、戦闘機形態になって一気に解放させる。
架空金属粒子でGが軽減されているし、勇者の力による運用で更に軽減されている上に私の耐久性も高いからマッハ10くらいなら殆どGを感じないくらいなのだけれど、この加速はイネちゃんでも強めのGを感じる速度になり、メタルドラゴンとすれ違う。
「でか!?」
『100mなんてレベルじゃないかもしれないか……』
「……いや大きく見積もっても200はないと思う。とりあえず捕まえる!」
相手がどれだけの大きさを誇っていたとしても、その巨体を構成しているものが大地を形成するどれかの素材であるのならば問答無用で掌握できるし、そうでない素材だったとしても解析というプロセスを挟むことで運用することができるようになる……まぁどういう理論かは未だにわからないけれど、ヌーリエ様にとってはそれが普通なんだろう。
そう考えながらメタルドラゴンに機体の腕部マニピュレーターでその装甲に触れた途端、私の頭の中に。
「:*:;;p>@{:」
言語とは言えない叫びににた音が鳴り響いて来た。
たまらずに接触していた場所を離し、距離をあけて少し痛む頭に手を当てる。
『イネ……大丈夫?』
「そういうイーアも……これはきっつい。掌握は諦めるしかないか……」
そう思ったタイミングでメタルドラゴンの後方……現れた方向の空間が歪み、人の形を形成していく。
「このタイミングで追加って……」
『こっちのロボには異常はないし、私たちの頭痛が収まればなんとかなるけど』
「それを待ってくれると思う?」
『少なくともこいつは止めておかないとキツくなるね』
「ここはもう精神論で……!」
ササヤさんが普段言っちゃってるような気合でなんとかという思考になりかけたところで、歪みから国際救難チャンネルで通信が入った。
<<こち……日本……月読……所……天原>>
『国際救難チャンネルって……しかも地球の周波数とほぼ一緒……』
「日本って単語が出たけど、日本には人型のロボットなんて商業的なアレしかないよね……」
<<こちら太陽系第3惑星地球日本国、月読ラボ所属の
その通信は明らかな日本語で全方位、全通信機に向かってそう叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます