S20.1 北森桃風香の哀愁晩餐 11月12日

――朱鷺森市 美術館併設喫茶店:紅葉 PM15:00――


桃風香「師匠ー、師匠どこー?」

桃風香「居ないのかな……?」


桔梗「あの人ならそのうち戻ってくるんじゃないですか。あの事件のことで忙しいでしょうけど、ここ自分のお店なんですし……」


桃風香「あ、桔梗さんだ。うーん……。そっかぁ……、早く帰ってきたらいいなー……」


桔梗「こんにちは、桃風香さん。帰ってきたときに文句でも言ってやればいいんです。次から減りますよ、きっと」


桃風香「あ、いや、別に急いでるわけじゃないんだけどね!――だから、どうしようかなーって」


▶彼岸が挙動不審気味に来店してきます


彼岸「――おや、もみじさんはいないんですか」


桃風香「師匠居ないみたい!」


桔梗「警官のはずなのに、なにその若干不審者っぽい入り方……」

桔梗「そういえばみなさんとはあまりお話したこともなかったですね。――桃風香さん、どうかしましたか?」


桃風香「あ……、えっとね!あのおじさん倒した後どうしようかなーって思って!」

桃風香「そう……!どこかに行ったりとか!」


彼岸「何処か……、ですか」

プロティン「ハッハーまるで週末の予定を決めるみたいな悩みだねぇ!それなら祝賀会ってのはもちろんあろうだろうけどさぁ!そういうことじゃあないのかぁい?」

彼岸「車でも用意して何処かに行きましょうか?」


桃風香「あ、うん!行きたい!――――どこがいいかな?」


桔梗「そろそろ冬ですし……、ぱっと思いつくのはスキーとかですね」


桃風香「スキー行きたい!ボクスキーやったことないんだ!」


プロティン「少し遠くに旅行かぁい?過去にだって時間旅行したことがある私たちならどこだって足が届きそうだ!」

彼岸「冬と言えば温泉ですね。私は温泉のある場所が良いです」


桃風香「お風呂苦手……。けど行ってみたいかも!」


プロティン「ハッハーw温泉もいいけど、わんぱく盛りがいるんだからレジャー目的のほうがいいんじゃないかなぁ??しかしスキーとなると本当に近場になりそうだぁw」

桔梗「ここならどっちもいけそうですね。ゲレンデ近くに温泉がある所も多いですから」


桃風香「あと忘年会?とかいうのもやってみたい!どんなことするの?」


彼岸「忘年会なんていう悪しき風習を真似してはいけませんよ」

プロティン「年末にやるその一年にあったことを忘れるって行事だろう??108回叩くって話も聞いたことがあるぞぉw」


桃風香「何か楽しそう!」


彼岸「まあ、やるとしてもお酒は抜きですね」

桔梗「えーっと、プロティンさんのそれは除夜の鐘を叩くことなんでしょうけど、忘年会とは直接関係ないと思います……」

プロティン「そうなのかぁい??でも忘れさせるときは1、2の……、ポカン!ってやるじゃないかぁw一年分ってなるとそれくらいやってもいいんじゃないのかぁい??」


桃風香「あとあと、他にも色んなことしたいな!」


彼岸「花見もしたいですね」


桃風香「花見……」


桔梗「花見だと少し先になりますね。南の方に行けば少し早く見れるはずですけど」


桃風香「早くって……、いつぐらい?」


桔梗「花見、で桜なら……、3月になってからとかだったと思います」


桃風香「3月かー……」


プロティン「ハッハッハーwそんなに予定詰めなくてもさ!終わればいつだって行けるんだからさぁ!どこに行くかより、誰と行くかってほうが大事っていうじゃない?明日誰と遊ぼうかってことを考えたほうが楽しいかもよぉ??」


桃風香「そうかも!けど最近このはちゃん忙しそう!」


彼岸「他にも誘える方がいればいいんですが……。誰かいます?」


桃風香「うーん、奉ちゃんも忙しそうだし……、凛空ちゃんかな?」


彼岸「関わった方々のお話を聞ければいいんですけれどね、今後の為にも」


桃風香「あ、じゃあ棗おじさんとか、ことりおねーさんとか、あと師匠とか!」


桔梗「私は……、しっかりと学校の人とお話したいですね……」

プロティン「ハッハ!誘えるお友達が悩めるほどいるのはとても素敵だね、もふかちゃんからの誘いならきっとみんな喜んで乗ってくれるよ!」


桃風香「えへへー!」


彼岸「――資料を見てると結構多いんですよね、関わってしまった方々って」

桔梗「――――こういうのって……、やっぱりお決まりのように終わったら記憶を消されちゃうんでしょうか」

桔梗「関わるはずのない人が関わってますし。ソレこそ私みたいに…………」


桃風香「うーん……、分かんない!」

桃風香「けどみんな仲良く終われたらいいな!」


彼岸「――関わった方々の中に素性の知れない方も混ざってるのは疑問ですが……。一般の方々には相応の措置が為されてる……、んじゃないでしょうか」


桃風香「あの変なおじさんも、仲直りできたらいいよね!」


彼岸「それができれば、一番良いんでしょうね」

プロティン「ああいうのは5年もすれば本人の 素 晴 ら し い 思い出になるものさぁw」


桃風香「スキーして、温泉に行って、あと忘年会もして……!他にも色々いっぱい思い出出来たらいいな!」


桔梗「そうですね、せっかくの縁なんですし、楽しくいきたいですね」

プロティン「全部終わったら全部やろう!なんでもできるよ!思いついたことをしていこうよ!!」


――朱鷺森市 美術館併設喫茶店:紅葉 PM17:00――


もみじ「買い出し行ってきたーって誰もいないじゃないの」


桃風香「あ、師匠!おかえりー!」

棗「なんだ、今日は店仕舞いかと思ってたんだが。ちゃんと仕事してたんだな」


もみじ「桃風香ちゃんに留守番をお願いしてただけよ。たかだか2時間いないだけで失礼ね。というか代わりに店番頼んだでしょ!みらのといい棗くんといい……もう」


棗「そりゃ失礼した」

桃風香「今日はね!これが終わったらどこに行くかーとか話してたんだ!――スキー行って、温泉行って、忘年会やるんだ!」


もみじ「――あらいいわね……。あのバカを取り押さえたら田舎の町だし時間も出来るでしょうね。多分ね……」


桃風香「その……、皆別に忘れちゃったりしないよね?」


もみじ「今は大変な時期だけど、それは立派な思い出になるのよ。今ほど招集もかけれないから会えなくなるのは増えるでしょうけど、そのことを忘れることなんてないわ。――みんな死ぬ前の最後の思い出くらい作りたいじゃない?」


棗「――そうだな。むしろあんな濃い面子、忘れたくても忘れられんだろうさ」


桃風香「そっか……、良かった!――えっと、それでね」

桃風香「ボク、ちょっと悩んでることあるんだ……。――――あ、コーヒー入れるね!」


もみじ「ありがとう。悩み……、ねぇ。それなら私もあるわよ」


桃風香「な、何?」

棗「ありがとな、北森。なんだ、珍しく当てられたかオーナー」


もみじ「ここの紅葉のマスター派遣制度が原則1年なのよ。それまでに後継者を育てて、美術館併設喫茶店「紅葉」を明け渡さないといけないわけ」


桃風香「――へ?」


もみじ「誰に喫茶店のオーナーになってもらうかちょっと悩んでるのよ。桃風香ちゃんにはそういうの、ない?」


棗「――そうか。そういうもんなんだな」


もみじ「なんだかんだ私とずっと一緒だから棗くん忘れてたでしょ~」


桃風香「え、え……、えっと……師匠、どっか行っちゃう……の?」


もみじ「そうよ。私だって雇われ店長なんだから、次は何処に配属されるかわからないわ」


棗「期限は?」


もみじ「12月よ。それまで楽しいことみんなでしましょうね」


棗「12月か。俺も、新しい止まり木を探さないといけないようだな」


もみじ「かっこつけちゃって」


桃風香「ボ、ボクも師匠について!――――いったら……」


もみじ「良いわよ。――でも、大事なことだから……、しっかり考えなさいね」


棗「ここも寂しくなるな。そんなに長く居た記憶はないんだがな」

桃風香「――どうしたら……」


もみじ「しっかり悩むことよ。もしかしたら桃風香ちゃんの人生が全部変わっちゃうかもしれない。ここでお友達と暮らすのもいいし、私についてきてもいい。でもそれはどっちも楽しいことになるのは間違いないわ。でも、どっちもは出来ないの。12月まで、ゆっくり考えなさいな」


棗「ふぅ、馳走になったな。――今夜は冷える、ちゃんと送り届けてやれよ」


▶棗はお金を置いて店を出ていきました


もみじ「あれでも寂しがりなの。……ああなると3日は帰ってこないわ」


桃風香「――ボクと初めて会った時の事覚えてる?」


もみじ「ええ。人手が足りないから、その辺でぼんやりしてた桃風香ちゃんを拾ったのよ」


桃風香「うん……ボク、一人でどうしたらいいのか分かんなくて……。――だから、拾ってもらって、弟子になって……」

桃風香「師匠はこれからも、色んな所に行くんだよね?」


もみじ「もちろんよ。まあ、何処に行っても喫茶店のマスターだけど」


桃風香「もし、一緒について行ったら、たまにでいいから行った先で色々調べたりしてもいいかな?」


もみじ「良いわよ。私には断る理由もないわ」


桃風香「やっぱり……。まだ、気になって。どこに居るのかなって……。――うん、もうちょっと。もうちょっとだけ考えてみる……」


もみじ「そうしなさい。もうお店〆るからね。暗いから気をつけて帰るのよ」


桃風香「――分かった!師匠!また明日ねー!」


もみじ「どうしたものかしらね……、親にでもなったような気分だわ。まあ、私の娘ならあんなに頭は悪くはないだろうけどね」

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