S10.3 七瀬もみじの新しい風 6月30日

――朱鷺森市 美術館併設喫茶店:紅葉――


▶もみじは朱鷺森市で起きている夜叉の弱体化、もしくは引退に応じて新しい人材を増やすことにした


もみじ「人足りてないから増やしたはいいけど労働なんとかに違反しないかしら……。まあいいや人じゃないしセーフでしょ。桃風香もふかちゃん?お友達にホットケーキ運んであげてちょうだい」


桃風香「はい!ホットケーキ持っていきまーす!」

幽雅「秋月さんと一緒にお呼ばれしちゃったけど、本当によかったの?き、北森さん」

桃風香「いーのいーの!ほら、焼き立てのホットケーキ、おいしそーでしょ?」

このは「ここのホットケーキはしっかりおいしいんですよ~」


彼岸ひがん「上からの伝達で『多少の事は見て見ぬ振りをしろ』、とは言われておりますが……。外部からの評判は揉み消せません、とお伝えしておきます」


もみじ「じゃらんの評価はロリコンの天国、陰キャ世界の救世主だからセーフよセーフ。お給金出してないし」


彼岸「せめてお小遣い程度はあげてもバチは当たらないのでは……?」


もみじ「お給金分はああやって現物支給してるのよ。洞察力足りてないわねえ、あなたのお上と違って」


彼岸「うぐ……。そう言われましても……」


もみじ「いいのよ。あなたの上層部みたいにゆっくり馴染んでいってね。取り敢えずゲームでもしてきなさいな」


彼岸「――任務とはいえ……、こんな小さい子達に混ざって……」


幽雅「あ、ありがとうございます!北森さんは良い人ですね!」

桃風香「いい人だなんて、照れるなぁー。このはちゃんチョコシロップ持ってこようかー?」

このは「いいんですかぁ?じゃあお願いします~。ふふっ」

桃風香「じゃあ取ってくるねー!――師匠!チョコシロップ持っていくねー」


もみじ「はいはい。ホットケーキならいっぱいあるからどんどん食べなさいな」


桃風香「……あれ?お姉さんだれ?」


彼岸「――鏡崎彼岸かがみさき ひがんです。こういう格好をしていますが一応警察ですので、何かあったら私に言って下さいね?」


桃風香「ひがんさん……って言うんだ。ボクは北森桃風香きたもり もふかって言うんだー。お姉さんもホットケーキ一緒に食べる?」


幽雅「彼岸さん、でしたか。一緒に食べませんか?みんなで食べたほうが美味しいですよ」

このは「みんなで食べればもっとおいしくなりますよ~」


彼岸 「――――嬉しいですけど、仕事中なので遠慮しておきますね」


桃風香「そっかー……。お仕事がんばってね」


▶桃風香はとぼとぼとチョコシロップを持っていきます


幽雅「お仕事だからね……。北森さん!僕にもかけてくれませんか?」

桃風香「いいよー、だらだらー」

幽雅「わぁ…………。北森さん。あ、あーん……」

桃風香「? あーん」


彼岸「――――あんな歳から異性と……、か……。私の頃は……ふふ、ふふふふ…………」

彼岸「――いいなぁ……。あれだけ小さくて可愛ければ私みたいに男っ気の無い人生なんて送らないんだろうなぁ……」


幽雅「はいあーん。僕はあんまりいらないから北森さんがいっぱい食べてね。僕は笑顔を見るのが好きだから」

桃風香「いいの!?じゃあ食べちゃうねー……!ふふん、おいしいー」


彼岸(そんなセリフ!一度でいいから!言われたいっ……!)


桃風香「このはちゃん美味しい?」

このは「はい、とっても~。でも桃風香ちゃんもずいぶんおいしそうに食べますね~、このはの分も少し食べますかぁ?」

幽雅「僕のでもいいよ。北森さん」

桃風香「えへへー、甘いホットケーキいっぱい食べれて幸せ……!」


彼岸「二十歳前後で私みたいな背の高い女でも良い人いませんかね。――――口の中が砂糖で一杯ですよ。どうすればいいんでしょうかもみじさん」


もみじ「私に振るな行き遅れ。これを見て珈琲飲むのがいいんでしょうが。付き合いなさい。――ま、ちょっと前ならいたんだけどね」


彼岸「私まだ二十歳なんですけどね……。いえ、身長の分老けて見えるとは言われますが……」


幽雅「どうぞ。いっぱい食べてくださいね。はいあーん」

桃風香「あむー……ふふふー……!」

桃風香「師匠ー!ホットケーキ美味しかった!」


もみじ「はいはい。じゃあお皿、お友達と洗ってねー」


このは「みんなで洗えばすぐ終わりますね。やっちゃいましょうか~」

幽雅「僕も手伝いますよ。多いほうがいいですからね」

桃風香「師匠!私ちゃんとお給仕?できてるかな?」


もみじ「できてるわよ。いい女になるにはお料理やお掃除が出来ないとね」


彼岸 「――――寮生活が……寮生活で後輩が全部面倒見てくれて……。違うんです……!全く駄目じゃない……!!――はずです……」


桃風香「えへへ~……!じゃあ皿洗いしてくるね!」

幽雅「危ないですよ。ほら、しっかり持ってくださいね」


▶幽雅は桃風香の後ろから腕を回し、身体を密着させお皿を持って支えるよ


桃風香「おっとっと、ありがとーゆーがくん」

幽雅「ええ。洗い方、教えますね」

桃風香 「おおー、ボク皿洗い苦手なんだ、助かるよー」

このは「気を付けてくださいよ~?割ったら……、どうなるんでしょ?」


もみじ「ふーん……?ま、やっぱり女の子はお皿洗いくらいできないとねぇ?ですよね彼岸、さん?」


彼岸 「――――今の時代食洗機とか便利過ぎてつい……」


幽雅「僕と一緒に立派な女性になりましょうね。北森さん」


▶しばらくして、皿洗いを終えたようです


桃風香「どう?お師匠、ボクちゃんとお皿洗いも出来るようになったよー!」


もみじ「偉いわね。ちゃんとお友達にわからないことは聞くのよ」


桃風香「うん!ボクもっと出来ること増やして師匠の役に立てるように頑張る!」


もみじ「よしよし。取り敢えず次のミッションはお友達と仲良くすることね」


桃風香「えへへー……!はーい!」


彼岸「――――大丈夫……。まだ大丈夫……」


▶深夜、小菅沢から電話がかかってきます


もみじ「やっぱり使い物にならなくなったのね。ありがとうね小菅沢くん。うん、そっちはちゃんと保護しておいて。あなたが責任持って守ってあげるの。取り敢えず迦葉山の方に行ってもらうから。そう、凱旋ね。小菅沢くんはともかくそっちは切り札になるの。わかった?うん、またね」


???「影響の為とはいえ、人材移動をそんなにして良かったのか?」


もみじ「あー?仕方ないでしょ。記憶喪失の人間から記憶取られちゃ何も出来ないし、睡眠の妖精から起きるっていう結果を奪われちゃ起きることもままならない。素人に毛が生えたのはいっぱいいるけど戦力としては心許ないんだから」

もみじ「それなら、守りやすいように分散させたほうがいいに決まってるわ」


???「それもそうか」


もみじ「私より、そちらも人手不足になるんじゃないんですか?伏菟野さん」


伏菟野「うちの彼岸は少々頭が怪しいが、役には立ってくれるだろう。電九郎でんくろうも初代アンドロイドだが、まだ素人よりは役に立てるだろう。それよりあの狐、何処で拾ったんだ?」


もみじ「あー桃風香ちゃん?和歌山の本部で夜叉登録取り消して枯尾さんを保護しようって思った時にね。和歌山のド田舎で迫害されてたから拾ってきた。獣系の亜人妖怪集落だったし、戸籍もなさそうだったからちょちょいっとね」


伏菟野「……ほう。和歌山には妖怪集落が残っていたのか。――何かあったら呼んでくれたまえ。こちらでも出来る限りのサポートはしよう」


もみじ「はいはいお師匠様。電九郎さんにもよろしく言っておいて。彩音はお願いします。――――私じゃ知識不足で。睡眠の妖精なんてとてもとても」


伏菟野「うむ。ザントマンだとは思うのだが……。女性で童ってなると記録から漁らないといけない。こちらは任せておけ」

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