第7話 訳解して厄介 (2018.12.03) PM5:30
2018.12.03 PM5:30
我ながら頭が悪い、そう思ったのは持ち出し端末で応援要請をした後だった。パトカーのサイレンを耳にして八丈島は頭を掻いた。--どうしても、手が出てしまった。後悔するも、すでに手遅れである。
時は十分前にさかのぼる。本庁へ戻るため電車を待っている八丈島の近くで、手際よく次から次へと財布をかすめ取るフードを被った若者とすれ違う。パッと見は二十代ぐらいの男性。するりと半身を避けるように、通行人のパスケースや財布を抜いていく。次の標的は、――似たような背格好の若者へ。ジーンズの後ろポケットにチェーンで止めてある財布なのにもかかわらず。パーカーの左袖から減音のためか、スポンジのようなものを巻いたペンチで切る。電車が通る音で十分にかき消される絶好のタイミングだ。
その光景が目に入った八丈島はとっさに手を出した。財布をスッた男の手首をガチッと掴む、ぎょっとした犯人へ「現行犯逮捕だ」と告げる。男の持っていたペンチがカランッと軽い金属音を鳴らして落ちた。
引き渡しをしたときに、反省の色もない犯人が「クソ公務員が俺たちの税金で」と唾棄するが、少しも良心が痛まない八丈島は「お前のムショ飯もその税金だ。問題なかろう」と同レベルで返す。制服警官が三名ほど駆け付けた中、馴染んだ顔があった。――かつて交番勤務の時に、教育指導だった六郷辰二であった。
(続)
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