第3話 そういえば

天野が入居して、二週目。少し天野がこのマンションに慣れ始めていた頃ではあるが、別に桐島の日常にさしたる変化はなく、相も変わらず、小説を書いていると、ふと先週の土曜日の集まりを思い出した。

「どう、もう学校には慣れた?」

と、草木は飄々と聞く。

「いや、まだですよ。」

と、天野は答えた。

「そっかぁ。そうだよねぇ。」

と、草木は興味なさそうに言った。天野は少しムッとした顔をした。

「このマンション、前は女性がメイちゃん一人だったから、天野さんが入って、花が増えたって感じだね。」

と、猪野沢は言った。

「私、紅一点って感じー?」

と、調子付いて草木が言うと、

「私も居るんですが・・・。家賃上げますよ?」

半分怒りまさせで、鹿島は言った。

「ひっ、済みません。大家さん。」

と、猪野沢と草木は焦った顔で言った。

「まったく、もう。」

と、鹿島は言った。この会は鹿島が旦那と離婚してから始まった。と言っても、もう6年も前の話だが。鹿島の憂さ晴らしと、寂しさを減らすために、集まろうと鹿島がマンションの住人に声をかけた。

「まあ、天野さん、あんまり気をはらないでね。最初からは難しいだろうけど。言いたいことは、思いやりを意識して言う。うちのマンションはそういう主義だから。」

鹿島は温かみのある声で言った。

「はいー。」

と、自信なさげに天野は答えた。

「そうよー、うちのマンションはフリーダムなんだから。」

と、草木はネグリジェの服装で答えた。

「フリーダムすぎませんか?」

と、天野は少し赤らめながら答えた。

「ったく。これだからお子ちゃまは。良い?二十歳過ぎると、色気で勝負するのよ。」

「はぁ。」

「もう少しお前は恥じらいを持て。」

と、桐島は言った。

「何言ってんの。桐島さん。私のネグリジェを見て、嬉しいくせに。」

「・・・。」

桐島は無言になった。そしたら、細めで天野は桐島を見た。桐島はぎくっとなった。

「まぁ、確かに嫌ではないねぇ。」

と、猪野沢は草木をジロジロ見た。

「やらしく見ないでよ、優ちゃん。まぁ、ネグリジェが、私落ち着くから。」

猪野沢が見ているのをそこまで嫌がってない様子で草木は答えた。

「ここっていつもこんな感じなんですか?」

と天野は尋ねると、

「そうだけど?」

と、皆不思議な顔して天野に答えた。

「・・・。」

天野は呆れたような、ビックリしたような顔をして、彼らを見た。そして、夜中までドンチャン騒ぎをして、皆はお休みと言って自分の部屋に入り、ドアを閉めた。

そして、少し日は過ぎた。そして、数時間後、

「よし、今日も10ページ書けたー!」

と、桐島は言った後、桐島の隣の部屋がガチャ、と言う音がした。

「おっ、天野ちゃん帰って来たな。」

と桐島は言って、言葉を続けた。

「どうして天野さんは、先週の土曜日にいつもこんな感じ?と言う質問をしたんだろ?」

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