第4話
3人の仲がよくなったのにはこんなエピソードがあった――。
東稜高等学校で3人が同じクラスになったのはまったくの偶然で、中学校3年の時たまたま同じB組に編入されたのがそもそもだった。
当初から仲は良かったのだが、さらに友情を深めたのは、夏休みに入って間もなく、学校主催のサマーキャンプが2泊3日で長野県の木曾駒高原で開かれることになった。
キャンプ生活というものは、どうしても自炊というものがくっついてくるので、これまでにあった遠足や修学旅行などの学校行事とはまるで違ったものとなる。これまでキャンプ生活というものを経験しかことがなかった3人は、顔を合わせるごとにキャンプでのことを楽しそうに語り合い、そのほかにも服装のことや所持品、おやつなど、いくら話してもつきることがなかった。
ところが、いよいよ出発という日になって、キャンプ生活をいちばん愉しみにしていた弘務が急に熱を出して参加できなくなってしまった。
水泳部だった弘務は、夏風邪をひいていたところにきて、水泳部の夏季トレーニングの追い込みで無理をしたために拗らしてしまったのだ。
中学生活最後の夏休みのイベントに参加できなかった弘務は、キャンプから戻ったふたりから楽しかった想い出を残念そうな顔で聞いていた。
佑介と茜のふたりは、あまりにもしょげた姿の弘務を見て、弘務の想い出作りのために日帰り海水浴の計画を立てた。
3人で相談した末、行き先は渥美半島の伊良湖と決めた。
ところが、どの親も子供3人で行くことに反対をし、近くのプールにしたらどうかという話が持ち上がったものの、そんな子供だましみたいな代替案に3人とも首を立てに振るはずがなかった。
それ以来何度も親への説得を試みるものの、一向にいい返事がもらえず、諦めかけていたとき、あまりに落胆している弘務の姿を見た母親が、見るに見かねて同行の意思を示した。
それならば、とほかのふたりの親も渋々承知することになった。
さあ、想い出作りのやり直しだ、と3人は大喜びで目的地の伊良湖海水浴場に向かった。
朝早くに家を出た佑介たちは、佑介の父親の運転する車でN駅まで送ってもらうと、それからは車体の赤い電車とバスを乗り継ぎ、昼前に海水浴場についた。
海の家を借りて水着に着替えた3人は、勢いよく海に向かって走り出し、昼食も忘れて痛いほど灼けた砂と、真夏の太陽がぎらぎらと降りそそぐ下で満足するまで遊んだ。
昼を大きく過ぎて、同行した弘務の母親に促されてやっと海の家に戻った3人は、焼き大アサリや焼きそば、それにかき氷などを存分に食べると、休む暇なくふたたび海に飛び込んで行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます