第3話
駅を降りると、そこからが本選のはじまりで、オリエンテーリングをしながら各ポイントに置かれた問題を解き、いちばん短い時間でゴールしたグループが優勝となる。もちろん提示された問題の正解率も影響する。
去年は3人で挑戦をしたものの、1次予選落ちしたためにミステリー・トレインに乗ることさえできなかった。それがあって今年の茜はこのイベントにヒートアップしている。
3人の学校の成績は、茜、祐介、弘務の順で、まず順位が入れ替わるということはない。それが原因で、ふたりはどうしても茜に対してコンプレックスがあるようだ。だが、お互いが自分の領域をわきまえているので、3人が大きくもめるということはまずない。
「今年のメンバーなんだけど、やっぱりこの3人でイク?」
ミステリー甲子園のルールとして、1グループ4人までと決められている。
「あとひとりといっても、心当たりはないからこのまま気心の知れたメンバーで臨んだほうがいいんじゃないか」
祐介は唇を真一文字にして意思表示をした。
「ヒロムはどう思う?」と、茜が顔を向ける。
「オレも同意見。だって仮に本選まで行ったとして、気心の知れないメンバーのために大事なところでトラブルが起きたら先に進むことができなくなっちゃうじゃないか。それと、3人だと多数決で決めることができるけど、4人だと2対2になって結論を出すまでに時間をロスすると思うんだ」
弘務はランチボックス手にしてもう一度机の上に音を立てて置いた。
「そうね、わたしもそう思う。弘務もたまにはいいこと言うじゃん」
「だったら決まりじゃないか」
空腹をこらえながら祐介がふたりの顔を交互に見る。
「じゃあこの3人で挑戦するけど、異論はないわね?」
「ああ」「それでいいんじゃないか」
ふたりは顔を見合わせながら茜の意見に賛同した。
「わかったわ。だけど、あとからグダグダ言いっこなしよ」
「わかってるよ。そんな事務的な言い方すんなよ。去年だって別に不平を口にしたわけじゃないじゃん」
祐介は言い訳顔で茜を見る。
「そうだけど……、一応確認だけしておこうと思っただけよ。だってそうでしょ、こんなことでこれまで3人が築いた友情を自壊させることはないわ?」
涼しげな眼差しで言う茜の表情を見たら、ほかのふたりはなにも口にできなかった。
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