第17話 残すは決勝
「あっはっはー、いやー勝った勝ったー!」
2回戦が終わってのランチタイム。俺たちは勝利の
「はっはっは、何言ってんだ大将。お前は結局引き分けだったじゃねぇか」
「うるせぇ! かみ合わせが悪かったんだかみ合わせが!」
俺の相手はあっちのクラスの首席だったのだが、奴は全敗だけは免れようと非常に消極的な攻めをする相手だった。奴は2本のショートソードをむやみやたらに振り回し、俺とまともに戦おうとはしなかったのだ。
結果は泥仕合の塩試合、延長戦まで行ったけどそれでも決着はつかないという、どうしようもないしょぼさだった。それまでの息をのむようなド派手な試合に比べてさんさんたる試合内容であった。
「まぁ本職である従騎士クラスが、私たち冒険者クラス相手に全敗なんて冗談にもならないわよねぇ」
ミーシャはそう言ってくすくすと笑う。くそこの勝ち逃げ野郎どもめ。決勝戦では目にもの見せてやる。
「そもそもお前らが勝手に勝利を決めちまうからいけないんだ、少しは俺に見せ場を残しとけ」
「あはははー、むちゃをいうんじゃないですよー、ナックスくん」
「いやいや、そうはいってもですねコモエ先生。俺にはハーレム王になるという大切な目標があるんです、その為にはアピールする必要があるんですよ」
「あはははー、そんなみだらなこと、先生はみとめてませんからねー」
「はっはっはー、そんな事言われても俺は止まりませんからねー」
見つめ合うコモエ先生と俺、なんだろう、やっぱり先生も俺の事が気になっているんだろうか。そう言えば先生はロリ枠なるのだろうか? それとも実年齢的にアダルト枠になるのだろうか? まぁ先生何歳なのかさっぱり分からんけど。
「こらー、なにかふおんな事をかんがえていませんかー、ナックスくん」
「いえいえ別に」
あはは、うふふと俺とコモエ先生は笑い合う。そんな平和な時間が流れていた。
「さて、ナックスちゃん、決勝のオーダーは今まで通りでいいのかしら?」
コモエ先生をからかって遊んでいると、ミーシャがそんな事を聞いて来た。
1・2回戦は時間短縮の為オーダー変更は認められていないが、決勝ではそれが可能なのだ。
「んーそうだよなぁ」
相手は優勝候補筆頭の聖騎士クラス、さらに言えば魔法試験決勝では俺たちに敗れているという因縁がある。これまでの奴らと比べて並々ならぬ気持ちでやってくるだろう。俺たちの試合内容は一から十まで研究しつくされていると見るべきだ。
「思い切ってオーダーチェンジする? それとも裏をかいてそのままにする? どっちがいいと思う?」
「うふふふふ。私はどっちでも構わないわよナックスちゃん」
むぅ、相談しがいの無い奴め。俺はちらりとバカを見るが、奴は上手そうに昼飯に食らいついている真っ最中だ。あっちは相談しても無駄なヤツだろう。
「まぁ、あれこれ考えるのもめんどくさい、魔法試験と比べて、オーダー順にさほど意味がある訳でも無し、お前らじゃんけんでもして順番決めといてくれよ」
「あら? という事はナックスちゃんは大将固定ってわけ」
「当然、俺はハーレム王になる男だぜ?」
おそらく相手の大将は首席である、ディアネットだろう。そろそろフラグがたまり切ってここらでイベントの一つでもあるかもしれない。
「ふっ、俺も罪な男だぜ」
「うふふふふ。元気で何よりねぇナックスちゃん」
「……その妙に優しい視線は止めてくれないだろうか」
俺はおさなごを見る様なミーシャにそう言ったのだった。
★
「そうか、決勝の相手は冒険者クラスですか」
リッカルドからの報告を聞いた、マクガインは手元の書類から目を離さぬまま鷹揚に頷いた。
「それで、君はどうするつもりですか?」
「もちろん、完全勝利です。それ以外に前回の屈辱をはらす術はありません」
「それは結構、では具体的にはどうするつもりですか?」
「そっ、それは」
その様な事をいわれても仕方がない、対戦相手の特徴こそはわかっていても、どういうオーダーで来るかは試合が始まって見なければ分らないのだ。
「これが、決勝での冒険者クラスのオーダーです」
答えに詰まったリッカルドに対し、マクガインは今まで目を落としていた書類を差し出した。
「先生、これは?」
その疑問に対し、マクガインは冷たい視線をリッカルドへと向ける。
「ジュレミという生徒は典型的な力馬鹿、ミーシャという生徒は技術に優れているものの、体力と腕力には劣ります」
差し出された書類はそれだけでは無かった、クラス編成試験の時の詳細なレポートも添付されていた。
「ともに一点突破のピーキーな性能です。嵌ればこれ以上なく厄介ですが、少し的を外せば、欠点だらけのその正体が露呈します」
マクガインは淡々とそう話す。
「最後は……このナックスと言う選手には特にこれと言った特徴はありません、何処にでもいる平均的な生徒です、もちろんこの白兵戦試験に限っての話ですが」
マクガインはナックスのレポートを見て眉を顰める。そこに在るのは目にすることも憚れる様な下らない落伍者の成績だった。
「私に手助けできるのはここまでです、ですが分かりますねリッカルド君」
「勿論です、僕の言葉に代わりはありません、完全勝利、それこそが僕たちの目標です」
「頼みましたよ、リッカルド君。これは単なる学生の競技会ではありません。決勝戦ではスポンサーの方々もいらっしゃる予定です。無様な真似は決して許されません」
マクガインはそう言うと机に視線を戻す、言うべきことは全て言ったという風に書類仕事へ戻ったのだった。
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