第四話 女装系男子の平穏な日常

 翌日、つまり木曜日の昼休み。

 私はラノベを読まずに、昨日決めていた通り五組を訪れて彼女と話すことにした。優羽と凛ちゃん以外と親しくなろうとすることに慣れていないので腰を上げて下ろしてラノベを取り出し開いて閉じて、また腰を上げてと三回ほど繰り返してから私は隣のクラスに行くことを決意した。変に期間を空けても余計話しかけにくくなるだけだと思うので仲良くなるなら今日から距離を縮めていくべきだと思うし。

 附属中学校あがりの生徒から構成されるクラスだからか、六組とは違ってぎこちなさの全くない五組の雰囲気に異物として注目を集めないかどぎまぎしながら、入り口に立って彼女を探した。

 見つけた。彼女は本を読んでいた。

 わいわいと騒がしい中で彼女は背筋を伸ばしページをぺらりとめくる。彼女の顔には笑みが浮かんでいた。漫画ならまだしも小説を読みながら笑うと、気味悪がられることも多いが彼女の場合とてつもなく画になっていてからかう気になれない。

 教室の中でただひとり文庫本に微笑みを落とす文学少女。

 まあ読んでるのはラノベだろうから、「文学」少女という感じはしないけど。

「こ、こんにちは」

 なんと声を掛ければ良いのか迷ってシンプルに、やや固いかなと思いつつも「こんにちは」と挨拶をした。いきなり「何読んでるの?」は以降会話がスムーズに流れるかもしれないが不躾な感じがするし、「やっはっろー」とか「にゃんぱすー」とかはうまくいけば・・・・・・いやいかないですね。確実に滑ります。

「・・・・・・こんにちは」

 彼女は不満げな顔で見てきた。

「もしかして今結構いいところだったり・・・・・・?」

「大丈夫。あんまり気にしないで」

「いいところだったんだ・・・・・・」

「・・・・・・そうだけど。本当に気にしなくていいわよ。き・・・・・・あれだから」

 彼女は何かを言いかけてからさっと私から視線を逸らした。

「あれって?」

 あれ=ツンデレかな。

「ええ。あれよ」

「いや、真顔になって肯定されても。どれのこと?」

「わからない?」

 わかって当然の質問をしているかのように彼女は言った。もしかしてさっきぱっと思い浮かんだ答え、安直だと思ってたけど実は正解だったりするのかな。

「え・・・・・・もしかしてさっき自分のことをツンデレだからって言おうとした?」

「・・・・・・全人類は少なからずツンデレの気質を備えていると思うの」

「うん?」

 真面目な顔をして突然語り始めた彼女は続ける。

「例えば、恋人でも親しい友人でも好意を伝えるのって恥ずかしいものでしょ? これって広義の『ツン』じゃない? 嫌いとか真逆のことを言う訳ではないけれど、好きだって言わない、言えない。けれどその人に親密な人間に対する行動を取るのだから、ツンデレでしょ?」

「そうかもしれないね・・・・・・?」

「・・・・・・要するにリアルの人間をツンデレだと言うのは、全人類がツンデレであるために全く当たり前で意味がないと言いたかったの」

「ということはつまり・・・・・・ええっと」

 こんなところで彼女の名前を知らない弊害が発生した。昨日スッと聞いておけば良かったと真剣に後悔している。

「・・・・・・こんなところで自己紹介をすることになるのはどうかと思うけれど、私は羽咋英梨花はくいえりか

「ほんとにね・・・・・・。私は鵜川旭陽です。よろしく・・・・・・?」

「・・・・・・よろしく」

 名前を名乗っただけだと座りが悪い気がして、とりあえず言ってみたが良く分からない空気になってしまった。

 しばらく沈黙が続いてしまったので気持ちを切り替えて先ほどの話題を続けることにする。全く別の話題を振るよりも自然だろう。

「ということはつまり羽咋さんはツンデレってこと?」

「・・・・・・え、続きやるの? もういいと思うのだけど・・・・・・」

「・・・・・・いや、気になるから。羽咋さんが何言おうとしてたのか」

 私も羽咋さんに全面的に同意で、これが自然な流れだとは思っていないしむしろ改めて話すような話題ではないのは自覚しているが、始めてしまった手前引っ込むわけにも行かない。

「えー・・・・・・」

 羽咋さんは露骨に眉をひそめて嫌そうな顔をする。

「・・・・・・で、羽咋さんはツンデレなの?」

「・・・・・・まあそうなんじゃない?」

 私が引くつもりのないことを悟ったのか羽咋さんは自身がツンデレであることを疑問形ではありつつも認めた。

「・・・・・・じゃあ『あれ』の答えは『ツンデレ』でいいの?」

 私はそうすることが義務であるように羽咋さんに尋ねる。

「・・・・・・やるならちゃんとやるわよ」

「・・・・・・そうだね」

 羽咋さんはふうっと息を吐き出して弛んでいた雰囲気を引き締める。

 私も一度自分の頬を叩いたような気持ちで羽咋さんと向き合う。

「『ツンデレ』は、まあ六十点というところかしら」

「どうして?」

「その答えだと私の気持ちの核心は捉えているけれど、私が言いたかったことはもっと複雑だったから、かしら。じゃあ逆に聞くけど、鵜川さんはどうして私のところに来てくれたの?」

 これは羽咋さんのところに行くかどうか迷ったときに一度考えたからするりと答えが出てきた。

「昨日話してて楽しかったからかな」

「・・・・・・百点」

 羽咋さんがそっぽを向いたままぼそりと呟いた。

 今の私の答えが『あれ』の内容として満点だった、ということだろうか。

「ふふ。羽咋さんって結構ツンデレだね?」

「・・・・・・」

 今度は頷かずに、羽咋さんは顔をわずかに赤らめていた。

 いい感じに距離を詰められた気がする。

「それはともかく。羽咋さんは何読んでたの?」

「・・・・・・これ」

 言いながら羽咋さんはタイトルを見せてくれた。

「あ、私もそれ読んだ」

「ネタバレはしないでね?」

「うん。じゃあ羽咋さんはこの著者の前作とかって読んだ?」

 私と羽咋さんはその作品でそれなりに盛り上がって一段落付いた。

 私は丁度会話が途切れたタイミングでずっと聞きたかったことを羽咋さんに尋ねてみる。

「今まで読んだラノベの中で一番面白かったのって何?」

 これがすごく気になる。もしも自分とかぶっていたら共感できる。読んでなかった場合は読んでみる気になる。良いことばっかり。

「一番・・・・・・そんなの決められないわ。ジャンルもいろいろあるし」

 確かに。私も無理。

 だが、ジャンルをある程度細かく分ければ答えられる。

「じゃあファンタジー部門一位は?」

「そうね・・・・・・やっぱり決められないわ。ジャンルもいろいろあるから」

「じゃあハイファンタジー部門一位は?」

「決められない」

「・・・・・・じゃあそのなかで主人公の主武装が剣部門一位は?」

「それなら・・・・・・だめ。やっぱり決められない」

 もしも羽咋さんとかなり仲良くなってからなら、「じゃあ主人公の股間がアクティベートしない部門一位は?」と訊いて「そのジャンル分けに意味はあるの?」というようなツッコミをしてもらうところなのだがそういうわけにもいかない。

ところで、どうして主人公の股間は全裸のヒロインとばったり出くわしてもアンチグラビティモードに移行しないのだろうか。しない方が良い主人公もいるが、煩悩にまみれているのにブレイブしない主人公もいる。まあ私は股間がサンクチュアリした描写なんて見たくないけど。本当はしてるんですかね。勃起? 知らない単語ですね。

「・・・・・・うーん、じゃあ――」

 私は今自分の中で一番アツいタイトルを挙げた。

「あ、私もそれは好きね」

「ほんとに⁉ じゃ、じゃあ! 誰が一番好き?」

「そうね――」

 それからかなり盛り上がった。

 羽咋さんの好きなキャラクターのかっこよかったシーンを二人でひたすらに挙げて、共感して。私の声は気づけば熱を帯びていた。そのせいで予鈴に気づかず授業に遅刻しかけたほどだ。いや、ほんとに楽しかった。

 その次の日も同じように羽咋さんと話したりして過ぎ去り、その放課後。

 私はいつものように凛ちゃんと優羽と帰っていた。

 休み時間は別々に行動している私たちだが放課後は一緒に帰ることが多い。

「この一週間過ごしてみて思ったんだけど、思ってたよりクラスの人普通じゃない? なんていうか、進学校の高校生って感じがしないっていうか」

 私は学校の最寄り駅に向かいながら一週間高校に通ってみて思ったことを言った。私たちの周りには同じ高校の生徒が私たちと同じように駅に向かって歩いている。一年生の部活動はまだ始まっていないからおそらく大半が一年生だ。

「あ、それすごいわかる」

「ボクもそれ思ってた。意外とみんなからそれほど知性を感じないというか」

「知性を感じないって慶、結構ひどいね・・・・・・」

 周りに同じ高校生がたくさんいるので男の子のふりをしなければならない優羽の一人称は「ボク」となり、私と凛ちゃんはは優羽を「慶」と呼ぶ。

 慶というのは優羽の兄の名だ。

「あ、そうじゃなくて! クラスの皆からうちの入学試験を突破したほどの知性を感じないってボクは言いたかったの!」

 傍から見ると私たちは男の子一人に女の子二人で優羽がハーレムを築いているように見える。しかも私と凛ちゃんはかなりかわいいので優羽は夜道では背後を警戒しなければならないだろう。

「そうよね。あたしも入学前は全員メガネの頭脳派集団だと思ってたのに、メガネ率それほど高くないのよね」

「まあコンタクトの人もいると思うけど」

「そうだね。ボクも入学するまでは全員メガネの賢人へたれだと思ってたなぁ」

「・・・・・・慶は韻踏みたかっただけでしょ」

 そのようにハーレムを築いているように見える優羽だが私と凛ちゃんの顔を追い抜き様に見ていく男子も舌打ちしながら納得するほどに男装をした優羽はイケメンであり、加えて人当たりもいいため案外嫉妬されることは少ない。

 優羽は私の指摘にえへへと笑って、

「でもどう? 賢人へたれ、って結構当たってそうでしょ?」

「え? どういうこと?」

 三人横列の一番右端、すなわち車道側を歩いている優羽に凛ちゃんが首を傾げた。

「普通に偏見なんだけどね。やっぱりそういう人たちの集団にはノリでガツンと決める人って少ないとボクは思うの。で、そうすると男女交際の気運が生まれにくくなってみんなへたれそうでしょ?」そこで優羽はすうっと息を吸って「だから賢人集団はへたれる」

「な、なるほど・・・・・・」

 凛ちゃんはビシッとキメた優羽の謎の説得力に瞳を輝かせている。

「そんなことないと思うけど」

「ふむ。どうしてですか、旭陽さん?」

 ちろりと覗かせた赤い舌で唇をぺろりと湿らせた優羽は私と凛ちゃんを挟んで視線を交わらせた。

 というか本当は男な私が車道から一番遠いってポイント低い。

「というか慶、べつに本気でそう思ってるわけじゃないでしょ?」

「そんなことないよ?」

「・・・・・・じゃあ言うけど、賢人集団はへたれたって言うより好きな人がいなかったってだけじゃないの?」

「好きな人はね、初めからいるんじゃなくて作・・・・・・」

 得意げな顔で話していた優羽は、唐突に口を閉じ、足を止めた。

「あ、ごめんやっぱり何もない。旭陽の言う通りかも」

 のだがそれも一瞬のことで、優羽はすぐに私に笑いかけて歩き出す。

「? え、そう? じゃあいいんだけど・・・・・・」

 何だろう。特に不自然な笑顔ではなかったけど、なんとなく優羽は自身の顔に笑顔を貼り付けたような気がした。

「え? 何? 結局賢人集団はへたれるの?」

 何も不自然さを感じていない様子の凛ちゃんがほけっと首を傾げる。・・・・・・凛ちゃんが何も感じなかったのなら、優羽は全くいつも通りだったのだろう。ただ私が考えすぎたということだ。

「さあどうだろ。違うかも。それで思い出したんだけど旭陽と凛ちゃんって結構男の子から人気あるんだよ」

 優羽がやや強引にも思える舵取りをする。いや、やっぱこれ絶対に何かあるでしょ・・・・・・。

 「へー」

「他の人の前では絶対に驚いてね、凛ちゃん・・・・・・?」

 まあ今考えるようなことでもないような気がするので、それは一旦脇に置いて、当たり前のように自分がモテているという事実を受け入れた凛ちゃんにとりあえずツッコミを入れる。

「わ、分かってるから⁉」

 絶対に分かってない。心配だ。

「・・・・・・いざってときは慶が凛ちゃんのことをフォローしてあげてね?」

「任せて!」

「大丈夫だって言ってるでしょ⁉」

 心配だなぁ。

「イケメンだったり美人だったりする芸能人が学生時代モテていたとあえて自称して笑いを取ったりするけど、あれとは別だからね? 自分とは関係ない、しかも誰が見ても整った顔立ちをしている芸能人だからああなるんだからね?」

 凛ちゃんは二番目の条件はクリアしているけど初めの条件を満たせないのでそれを実行してしまうとただ単に苛立たしいだけになってしまう。

「大丈夫だから⁉」

「ならいいんだけど・・・・・・」

 まあ心配だけど今なにかできるわけでもないか。

 それより優羽が気になることを言っていた。

「慶、私もやっぱり人気あるんだ」

 私が男子に人気がある。

 互いの為人なんて何も分からないこの入学間もないこの時期に。つまり私は客観的に見てかわいいということだ!

「旭陽も人のこと言えないからね⁉」

「あ・・・・・・」

あまりにも嬉しかったので思わず訊いてしまったがこれはいけない。優羽に突っ込まれてしまった。

 凛ちゃんが私をジトっと見ている。

「私は大丈夫だよ。だって凛ちゃんと慶以外に友達なんて・・・・・・ほとんどいないからそんな話することないし」

 友達なんていない、と言おうとしたのだがぱっと羽咋さんが思い浮かんだので、ほとんどいないと言うことにした。

「え、もしかして旭陽って私たち以外に友達いるの?」

 意外と耳聡い凛ちゃん。

「というかその台詞私にはノーダメージだけど結構ひどいよね。ヤンキーの財布になった気弱な高校生が凄まれながら言われそうな台詞」

「休み時間旭陽が五組で話してた人?」

「そうだけど」

 優羽が話を引き戻した。

 べつに隠すようなことでもないが、優羽に羽咋さんと昼休み私が話していたところを見られていたらしい。

「嘘⁉ 旭陽に友達⁉ しかも五組の人⁉ 私それ知らないんだけど!」

「すごくきれいな人だよ。髪の毛は真っ黒ですごく長い。休み時間にちらっと見たら本を読んでた」

「まあそんな感じかな」

 優羽の説明に私は頷く。

「え、女の子なの?」

「そうだよ」

 軽く目を見開いている凛ちゃんの問いに優羽が答える。

 優羽がいるから口には出さないけど、私は女の子として学校で過ごしているんだから友達が女の子なのは何も不自然じゃないの凛ちゃん分かってるのかな。まあ凛ちゃんの認識では私は男な訳だから急に対応しろといわれても困るとは思うけど。

「・・・・・・旭陽はなんでその人と話すようになったわけ?」

 凛ちゃんの声音は少しだけ私を非難する風だった。

「んーっと、私が休み時間ラノベを読んでたときにその人、羽咋さんって言うんだけど、が話しかけてきて、羽咋さんもラノベが好きだったから話すようになった」

 とは言っても原因なんて思い当たらないので普通に答える。

「五組でその羽咋さんって人と話してたってことは旭陽が羽咋さんのところに行ったってことだよね?」

「うん」

「旭陽がそこまでするの珍しいね」

「確かにそうかも」

「そんなに気が合うの?」

「なんだろ。気が合う・・・・・・まあそうなんだけど、ラノベについて誰かと話すのって楽しいんだよね。今まで私の周りにそんな話をできる人が慶以外いなかったから珍しく見えるのかも」

 中学校のときは休み時間にラノベを読んでる人はいなかった。家では読んでたりしたのかもしれないけど、そんなことは友達が二人しかいなかった私には分からない。それで偏差値の高いうちの高校ならなんとなくラノベが好きな人が多いんじゃないかと期待していたりもしたので、羽咋さんと会えてその通りになったわけだ。まあ案外普通の高校生が多かったわけだけど。

「ふーん・・・・・・」

 矢継ぎ早に質問を重ねた優羽は黙り込んでしまった。

 凛ちゃんは私に一瞥をくれると共に軽くため息を吐いてから口を開く。

「あ、そういえば来週から部活動見学よね? どうする?」

「あー先生がそんなこといってたかも。というかどうせ姉さんのところでしょ? あんまり気は進まないけど」

「まあたぶんそうなんだけど。月乃って中学校と同じで文芸部よね?」

「うん」

 月乃というのは私の姉の名前だ。一つ上の高校二年生。

「慶はどこか気になる部活あった?」

「えっと・・・・・・」

 優羽は言いながらかばんをごそごそとして冊子を取り出した。いつかのホームルームで配られたものである。部活動一覧が掲載されているページもある。

「このアルティメット・・・・・・とかいうのやってみたいんだけど運動部だし」

 アルティメット、確かフリスビーを使ったスポーツだ。

 優羽は見た目は男だが身体能力などは女のそれのため運動部に入ると他の部員に勘付かれる恐れがある。

「文化部は・・・・・・とくにやってみたいのはない、かなぁ。ボクも文芸部で」

「やっぱり他の文化部でも・・・・・・」

 姉さんと同じ部に所属するのにやはり気が進まず他の文化部でもよくない? と言おうとして止めた。

 まあ部内で年功序列のプチ縦社会ができることもあるらしいので上級生に優羽の事情を知っている姉さんがいるとやりやすいのは確かではある。実際必ず中学校ではどこかに所属しなければならなかったので文芸部に入部したのだが、何事もなく三年間が過ぎ卒部できた。

 なんだけど姉さんがいるんだよなぁ。

「旭陽、そんなに月乃と同じ部活に入るのが嫌なの? 中学校でも一緒だったでしょ?」

「そうなんだけど・・・・・・」

 気が進まない。

「え、旭陽、文芸部に入らないの?」

 優羽がそんな可能性は考えていなかったというように首を傾げた。

「いや・・・・・・入るけど」

 まあ私の答えは決まっている。

「え⁉」

 凛ちゃんががばっとこっちを見た。

「気が進まないのはそうなんだけど、よく考えると中学校のとき姉さんが同じ部活だからといってどうということもなかったし楽しかったから入るよ」

「ついさっきまで渋ってたくせにこんなにあっさりと・・・・・・いいけど。じゃあ部活動見学は文芸部で」

「ん」

「なにげに月乃ちゃんと会うの久しぶりだなー」

 元気よく言った凛ちゃんに私と優羽が応える。

 優羽は月乃に会うのが楽しみなようでにこにこと笑っている。

 私は特に変わった様子のない優羽に普通に流れていきそうな日常を予感して、ほっと胸をなで下ろしていた。

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