第23話
好太郎は自宅近くでやくざのフロント企業の男に話しかけられた。
パトカーに救いを求めて難を逃れた。
近江に電話をするとすぐに警察に連絡するということで、少し落ち着いたところだった。
「何があったの」
母親は息子の身に何が起こっているのか心底心配しているようだった。
「亡くなった部長のせいなんだ」
「山の中で発見された人でしょ」
「部長はやくざの関係している会社と裏取引をしていたんだ。そいつらが昼間に会社に来て、すぐに警察に連絡したのだけど、今度は待ち伏せされたんだよ」
「あなたに何の用事があるというんだろう」
「そうなんだ。俺は部長のやっていたことはまったく関係無いし、どういう内容かを知っているんじゃないんだけど」
「上司の人は何と言っていたの」
「すぐに警察に連絡すると言っていた」
「もう現れないといいけど」
すると好太郎のスマホが鳴った。近江からだった。
「警視庁から神奈川県警に電話をしてもらったんだが、明日会社に県警のマル暴が来るということだった」
「分かりました」
明日の午前中にやって来るということだった。
好太郎はすぐに理恵に電話をした。無駄な心配はさせたくなかったのだが、言わずにはいられなかった。
「心配だわ。私は明日東京に戻るわ」
「まだ何の手がかりも無いのか」
「警察が捜査をしてくれるからね」
「お互いに大変なことになったね」
「頑張るしかないわ。落ち込んでばかりいたら、私が駄目になってしまう気がする」
「そうだね、気を強く持たなければやってられないよ」
理恵との結婚で結婚式場を探していたころがなつかしく思えた。
今ではそれどころではない。
理恵からも結婚式の話題はまったく出なかった。
休みに見に行くと約束した式場もあったのに、それどころではなくなった。
あまりにも思いがけない展開が自分たちに起きているとため息が出た。
次の日、午前11時に神奈川県警のマル暴の刑事がやってきた。
柏原という40歳前後の柔和な感じのする男だった。
「横浜の商事会社の奴ですか」
近江は彼らの名刺を刑事に見せた。
「横浜にはやくざのフロント企業が多数あります。
正直、実態の分からないものも多くて、うちでも把握出来ていないものもあるのが現状です。この会社の名前は見覚えがありません。一度うちに来ていただいて、写真を見てもらえますか」
近江は憤慨していた。
警視庁に相談し、神奈川県警との連携で、もう相手には接触しないように勧告してもらっていたと考えていたのに、まだ相手も特定出来ていないことが分かったからだ。
「もしかすると警察は当てにならないかも知れない」
「マル暴とやくざは癒着しているという噂を聞いたことがあります」
志賀は近江を覗き込むような表情をした。
好太郎は背筋に冷たいものを感じていた。
#24に続く。
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