第16話

好太郎は会社を定時に退社して、東京駅に急いだ。

理恵からはこの日三度ラインが来ていたが、やはり家族からは何の連絡もないということだった。

新幹線に乗って、ほとんど満員のなかでやっと席を見つけて座ったときに理恵から新しいラインが来た。

「警察の人が来ています」ということだった。

やはり警視庁の威厳はすごいなと思った。

一般人がいくら頼んでも「まだ事件には認定できない」の一点張りだったが、警視庁の紹介があればすぐに駆けつけるのだから。

新幹線が宇都宮に着くと、東武線の駅まで駆け足で急ぐ。

JRの駅から東武線の駅までは普通に歩くと10分くらいかかるのでけっこう距離がある。

しかも商店街を通るので、人が邪魔で歩きにくい。

大回りだが、広い道路の歩道を走れば5分くらいで着く。

幸い、東武線のホームには電車が待機していた。

20分で理恵の実家のある駅に着いた。

好太郎はまた駆け出して、理恵の実家に急いだ。理恵の実家の前には車は停まっていなかった。

もう警察は帰ったようだ。

「おかえりなさい」

理恵は玄関で好太郎を迎えた。

「もう警察は帰ったの」

「ちょっと前にね」

「どうだった?」

「冷蔵庫のなかを見せて説明すると確かに変だと言っていたわ」

「それでどう動くと言っていたの」

「捜査すると言っていたわ」

「本当に動いてくれるのだろうか」

「刑事さんは真剣な感じだったわ」

理恵はそう言うと、刑事の名刺を見せた。

「宇都宮中央署捜査一課山崎貴之警部補」と書かれていた。

「捜査一課か、本気だなこれは」

「でも警察は失踪人捜索はしてくれないと思うのよ」

「それは探偵の仕事だな」

「探偵に頼もうか」

「お金がかかるでしょ」

「かなりかかると思うよ」

「どうしよう」

「俺たちでやれるだけのことはやろう」

「そうね、明日から私も動くわ」

「仕事はどうするんだ」

「明後日まで有給にしてもらったわ」

「俺も動けるといいんだけど。明日主任に有給取れるかどうか聞いてみるよ」

「無理しないでね」

理恵たちは午後11時には就寝した。

次の日はあいにくの雨だった。午前6時には好太郎が会社に行くために家を出て行った。

理恵はまず父親の会社を訪ねることにした。




#17に続く。




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