第13話

理恵の家族と連絡が取れなくなって24時間以上が過ぎた。

理恵は実家の居間にいた。

室内は洗いざらい探して、何とか手がかりになるものはないかと思ったのだが、何もなかった。

携帯もラインもメールも来ない。

不安しかなかった。

一人でいると頭が混乱して叫びそうになった。

どうかただの旅行に行っただけにして欲しい。

自分に連絡の無いのは、家族が自分に何らかの怒りがあるのだろう。

それでもいい。

とにかく無事でいてくれたらそれでいい。そんなことが頭のなかで巡りめぐっていた。

午後6時、好太郎が到着した。

「ごめん、会社を出るのに少し手間取った」

「いいの」

理恵は好太郎の胸に飛び込んだ。

「手がかりは無しか」

「何もないわ」

「とりあえず、警察に相談してみようか」

「そうね。旅行に行ったような様子なんだけど、はっきりしないし」

「最寄の警察署をここに来る間に検索しておいた」

「どこなの」

「宇都宮南署だ」

「どこに電話したらいいんだろう」

「取り合えず受付という電話番号はないから警備課というのがあったんでそこに電話してみよう」

「私がするわ」

理恵は宇都宮南署の警備課に電話した。電話に出た警察官は、まだ一日ではどうなるか分からないので、取り合えず地域課の警察官をそちらに向かわせるので事情を話してもらいたいという返事だった。

十数分経って、理恵の実家の前に一台のパトカーが停まった。

なかからは地域化自動車警ら隊の隊員がふたり降りてきた。

理恵は玄関のドアを開けて彼らを室内に招きいれた。

「ご家族全員と連絡が取れないということですね」

「そうです、これまでにこんなことなかったものですから」

「旅行に行かれた可能性はありますか」

「私に何も言わないで行くことがまず考えられませんし、父親も会社ですし、弟も大学があります。この時期に家族全員で旅行というのも考えられないのですが」

「家族の誰かが事故に会ってそのために連絡が取れなくなっているということは」

「24時間もラインも留守電も聞かないことはないと思うのですが」

警察官たちはあらゆる可能性を探っていると理恵は感じた。

「24時間たったといいますが、見方を変えればまだ24時間しか経っていないとも言えます。ご心配になるのは分かりますが、これが犯罪と関わりがあるかどうかはまだ何とも言えないというのが警察の見解だと言えますね」

「それは分かります。ですので、捜索願というかたちで取り合えず届けることは可能ですか」

「それは可能ですが、家族はみなさん大人ですのでまだ早いかなとは思います。子供さんなら事件性が高いという判断になりますが、大人の場合は、自己的に失踪もしくは一時的に身を隠すとかそういうことも多いですから」

「私の知る範囲では、家族全員が姿を消さなければならないような問題はなかったと思います」

「あなたはいつご家族と会いましたか」

「一週間前です。私たちの結婚の件でふたりでこちらに来たんです」

「そうですか。一応状況は伺いました。捜索願は明日まで待ちましょうよ。明日まで連絡がつかなければ署のほうに連絡願ってもらっていいですか」

ふたりの警察官は帰っていった。

「私はしばらくここにいるわ」

「俺もいたいが明日は会社に行かなければならないから、また明日ここに帰ってくるよ。新幹線通勤ということになるな」

「ごめんね、迷惑かけて」

「迷惑なんて言わないでくれよ」

好太郎は理恵を力強く抱きしめた。




#14に続く。





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