2
居酒屋から帰宅して、そのまま部屋に戻った。
部屋の扉を乱暴に占めて、枕に頭を埋めた。
自分の罪悪感が止まらない。
止まらなくて、止まらなくて。今すぐにでも、この枕で息を止めてこの場で死にたい。
弟がドアの音に気づいて部屋に入ってきた。
「姉貴?!」
ベットでうずくまっている私を見て、慌てて起き上がらせてくれた。自殺をしたいとは思ったが、死ぬ勇気は私にない。
「おおい!大丈夫か?!」
「うん、心配かけてごめんね」
弟は本当に自殺じゃないと安心した様子だったのか、安堵した表情。
「ったく。びっくりしたぜ。」
そのまま部屋を出ていこうとした。
「義則」
「ん?何?」
「・・・ごめんね」
「?!・・・姉ちゃん本当大丈夫?」
また、弟を困らせてしまった。私はなんてダメな姉なのだろう。
弟が求めているような姉には、
「あ、今自分ダメだとか思ってたでしょ」
弟はニヤッと笑う。私は当てられてぎょっとした。
「思ってくることぐらいわかるって。何年兄弟やってんの。姉貴はなんも悪くないし、むしろいい姉貴だよ」
そういって弟は部屋を出て言った。
弟に見透かされていたこと。また、自分が何をしていいかわからなくなってしまった。
自分は何がしたかったのか。何が正しいと思っていたのか。
答えにはないっていないが、自分が「嘘」に縛られていたのは間違いないだろう。
嘘を良いように使ったり、悪いようにとらえること。そもそもこの矛盾にどうして気づかなかったのだろう。いや、矛盾というよりも、嘘に固執しすぎて、「嘘をつく自分」と、「嘘をつく人」とイコールをつなげていたようなものだ。
自分の嘘は、自分をよくするため。
でも、嘘をつく自分を好きになることはなく。
他人が嘘をつかない素直さは、惹かれるものの一つであって。
でも、気に入らないと「嘘」であるから魅力の減退がある。
自分の価値を、他人に押し付けて勝手に切り捨てている「自己中心的」な考えだということにどうして気づけなかったんだろう。
握りしめていた枕を、また顔に当てた。ぎゅっと両腕でいっぱい力を入れて握りしめる。自分への情けなさや過去の懺悔。気持ちが胸いっぱいになっている。その気持ちを抑えきりたいばかりに枕を握りしめた
自分が過去にしてきたことは、人の品定めだ。
でも、それを自分の傲慢な考えだと気づかなかった。気づけなかった。
それは「嘘」に執着している自分がいて、「嘘」に価値観を見出していて、「嘘」を人に宛がったという行為からなるもの。
時に、それを肯定する要素は私の「過去」そのものだった。
母のことがあったり、家族のことがあったり。「良い子」になるためにしてきた「嘘」から始まった。
当時はその「嘘」も、何らかの理由で肯定的にとらえることが私のプライドでもあったわけだ。
だが、大人になって違う。私は子共の頃とは違う。そう言い切れる自信はない。
自分が、自分を受け入れることをしない。
それが自分でもわかっていた「自分が大嫌いなこと」なのに、それを無視してすべてを周りに押し付けようとした。
少しの「嘘」も許さず、自分が受け入れる器を狭めていた。本当なら、自分が受けれても良いぐらいの「小さな嘘」。それを受け入れてこなかった「傲慢さ」。
それが解って尚、逃げたいという「傲慢さ」。
枕の布が、シャリシャリと小さく音を立てている。
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