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ある日の朝、いつものように改札を出て通学をしていた。
「ちょっと待って!」
背後から声がした。朝から大きな声がするな。そう思いながら足を止めることもなく、いつものように歩く。
「ちょっと待って!待ってください!」
声が近づく。ふと、左腕をつかまれた感覚。背後に視線を向けると、そこには息を切らした若い男性が立っていた。
「あの、すみません・・・。」
どうやら私が呼ばれていたようだ。突然のことで私も驚き、足を止めた。男性はホームから追いかけてきたようで。息を必死に整えようと手を口に押えている。
「はい」
「あの・・・あの・・・」
その時、私はその若い男性を不審な人物としか思えなかった。新手の勧誘か?それとも別の理由で呼び止めたのか?いずれにせよ、このまま立ち止まっていると遅刻する。
「あの、遅刻しちゃうんで」
「あ!すみません!あの、実はあなたに言いたいことがあって」
息が整ったようで、そこから大きく息を吸った。
「あの、駅でずっと見てました!好きです!」
突然の告白だった。
私は瞬時に、それが告白だとわかったのだが、何せ今日初めてあった人。好き嫌いという感情以前に、「初めまして」。そんなことを言われても、こちらも何を言っていいのか。
「・・・」
言葉が出てこない。
「あ!決して不審者ではありません!ストーカーとか、そういう類のものではありません!何度か駅でお見掛けして、段々と好きになっていったというか・・・すみません」
男性が汗をにじませて、顔を赤くして言った。
なぜか、私はその男性の姿に、初めて会ったのに魅力的だと思えてしまった。
「できれば、お友達からお付き合いしてもらえませんか」
「はい」
「・・・えっ?!」
ふいに「はい」と言ってしまった自分がいた。
「私でよければ・・・」
「え?!あ!ありがとうございます!すみません」
この人は何回謝るんだろう。
「あの、南条大付属に通っていますよね。俺、その付属の大学に通ってるんです。だから、学校でもよく見てて、俺、高校も付属出身で今年から一年生になったんです。そんな年離れてないです!」
必死に説明する男性がなんだか可愛く見えてしまった。
「なら、メールアドレス交換しますか?」
「え?!あ!はい!よろしくお願いします。」
鞄から携帯を取り出し、交換した。
「それでは。また」
「はい!ありがとうございました!」
目を輝かせながら、男性は私に手を振った。私は頭を軽く下げて、そのまま学校へ。
幸い、遅刻にはならなかった。
先生が朝の連絡事項を読み上げているときに、鞄から携帯のバイブ音が鳴った。こっそりと取り出し、携帯を開くと先ほどの男性からメールが届いていた。
「今日は突然すみませんでした。聡って言います。これからもよろしくおねがいします。」
だからなんで謝るの。笑いが込み上げた。
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