いたすともげる異世界に迷い込みました
宮脇シャクガ
異世界去勢不安
こっちに来てからはや2年、書類の上では30歳になった。
ロスタイムはあるものの魔法だって使えそうなお年頃だ。
貴族たちが集まって私のための式典を開いてくれているらしい。
こんなはずではなかった。
もっと地味に分相応の暮らしがしたかった。
そんな願いもむなしく煌びやかなパーティーの壇上に立たされる。
特訓の成果もあってようやく貴族との日常会話も卒なくこなせる
ようになった程度だというのに、我が雇い主は厳しいらしい。
独立への夢をかけて、契約上最後の仕事をこなすために動く。
すっかりくたびれたツナギがこちらに来てからの時間と経験を無言で語っていた。
ほうほうのていで挨拶を終え、義務感にまみれた拍手と賛辞の嵐から抜け出したところに今現在の雇い主であるところの伯爵がいた。
このまま部屋に戻ってもいいとのことだが、部屋に戻るとほぼ間違いなくご褒美という名のハニートラップが待っている。
私は伯爵にかねてからの疑問を問いかけた。
「結論から言いますと、最後までいたすともげるわけですね?」
「左様で。」
さよなら、私の異世界ハーレム生活。
ささやかにつましく暮らすことも、はっちゃけてとんでもない暮らしをすることもできないのだ。
ことと次第にはよるが、こちらの世界では一生に一人しか(物理的には)愛せない。
ただの一夜の過ちも許されない。そんな異世界。
どうしてこんな異世界に来てしまったのだろうか。
全ての始まりは日本で元号が変わったばかりの5月のことだった。
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