川の風景

 風に身を任す。風が青い草の匂いを運んで来て清々しい。近くには、スズメもいる。何かをついばんでいた。この辺の鳥達はみんな逃げない。人間馴れしているのかな。

 師匠とキャッチボールをやった。昔友達とやった位なので、感覚を掴むのに苦労したがすぐ慣れた。

 しばらくキャッチボールしていると、子連れの夫婦もやってきた。俺達はキャッチボールを止めて、昼食を取った。サンドウィッチだった。ハムにキャベツのサンドウィッチや、ハムにトマトのサンドウィッチなど様々な種類があっておいしかった。


俺は親子の様子を眺めていた。子供はお父さん、お母さんと一緒にご飯を食べていた。お母さんが丁寧に口を拭いてあげている。それからご飯が終ると、お父さんと子供は高い高いをして遊び始めた。

 俺にもああいう時期があったのかな。親父、お袋と心通わせた時期があったのかな。今どうしてるんだろ。携帯を取り出すと、電話帳を開いた。お袋の電話番号が書いてある。電話したいけれど、プライドが邪魔して電話出来ない。俺の方から頭下げるなんてごめんだ。体育座りして、目を伏せた。涙が込み上げてきた。認めてくれない親なんていらない。

 でも、何でこんなに涙があふれてくるの。思い出したくないのに、思い出ばかりが蘇ってくる。高尾山登り、ピクニック。そして、北海道旅行。本当に色んな想いが溢れて来る。会いたい! でも、会えない。会う時は、俺が絵で賞を取ってからだ。

涙が収まるのを待って師匠を見ると、〇川の雄大な流れをスケッチしていた。何となく、穏やかな表情をしていた。


 帰ってから、手紙を一つ一つ開ける。でも、月並な返事しか書いていなかった。期待しているとか書いていなかった。腹が立って手紙を道具箱の中に全部突っ込んだ。

やっぱり俺は孤独の道を歩んでいるんだ。幸せは弟に取られちまった。でも後悔はしていない。俺の選んだ修羅の道だから。


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