視聴覚室で映画やアニメを見たい

放課後になると、授業中にまとめて来た案を発表する。観たい映画とか、アニメ、小説、詩とかだった。

風景の勉強をする為に、百人一首の研究もすることになった。

「やっぱ、記念すべき一作目は『スタンド・〇・ミー』だよな!」

 岩樹が俺に同意を求めてきた。

「僕、洋画あまり見たことないから岩樹君に任せるよ」

 俺がもじもじと答える。中村さんが、黒板に『スタンド・〇・ミー』と大きく書く。

 中村さんもうんうんうなずいていた。

「いいんじゃないっすか。私もこの作品好きなんだよね」

 岩樹がカバンからDVDを取り出した。

「実はもうレンタル屋で借りてきてんよ。早速見ようぜ」

 中村さんが大口を開けてポカンと岩樹を見た。そして、言った。

「あんた、どうやって見るつもり。再生する道具何ひとつ無いんだよ」

 岩樹がこほんと咳をして、

「とっつあんに頼んで、視聴覚室貸してもらうんよ」

 中村さんが一言……

「あんた馬鹿?」

「馬鹿って何だよ! 名案だろ」

 中村さんがはあ~ってため息をついた。

「本当に名案と思ってるの?」

 岩樹は「おう」と答える。中村さんがさとすように言う。

「あのね、部活でも無くて、個人的なグループのために視聴覚室を貸してくれるはずないじゃん」

 岩樹が黙り込む。中村さんが追撃を入れる。

「分かって言ってたんだよね。そこんとこどうなの? 岩樹?」

 俺と中村さんが岩樹を注目する。

岩樹は机の上に座ってしばらく目を閉じていた。中村さんがいらいらした口調で、

「ねえってば」

 その時、岩樹は目を開いた。

「馬鹿なのは杏子てめえの方だよ。何故、やってみないうちから失敗することを決め付ける!」

「岩樹ってば、そんなこと言って!」

「行動してからじゃないと分からねえだろ」

「やってみなくても分かるから」

 岩樹は、ため息をつくとこう言い放った。

「おい、藤やん行くぞ、意地でもDVDレコーダー借りてやる。中村、後で泣いても知らんぞ」

 中村さんは、右手親指と人差し指で缶をぷらぷら持ちながら、

「大船に乗った気で待ってまーす」

 (あれ、一瞬、岩樹が中村さんのこと杏子って呼んだような……)


 何はともあれ、職員室に行くと、菊池先生のもとに直行した。

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