便器に頭を突っ込まれたんだ

 俺はその様子を客観的に見ていた。


読書感想文にこの事を重ねあわせて書けないだろうか。また書くとしたらどのように。そんなことをずっと考えていた。


取材の為に五感を研ぎ澄ます。


まず視覚情報、トイレはラクガキだらけでお話しにも綺麗とは言えない。また相合傘なども書かれている。根拠のないただのラクガキだ。

またトイレの壁には豚眼鏡と切り込みが入っている。これは以前キツネが俺の目の前で、ハサミで木製の壁に切り込みを入れた傷だ。そしていじめっ子達を見る。岩樹やキツネその他3人がニヤニヤしてこっちをみている。実力もないのに威張り散らかすキツネを見ているとイライラする。

次に嗅覚、鼻を使ってトイレの匂いを嗅ぐ。もうずっとトイレに居るのでなんか懐かしい匂いがした。芳香剤の匂い。しょんべんの酸っぱい匂い様々な匂いがごったまざっていた。トイレの窓が開いているので時々外の新鮮な5月の若葉の匂いがトイレに流れこんで来る。

聴覚……。


そこまで行ってふっと思った。


そういえば、俺がトイレに連れ込まれている間、先生も生徒も誰も来ないな。そこまでだった。

「豚、お前何ぼんやりしている訳?」

 考え過ぎて頭がオーバーヒートしてくらくらする。

「生意気なんだよ。便器に顔突っ込んで頭冷やしてやろうか?」

 頭がぐるぐるして言葉が出てこない。

その時だった。キツネが俺の頭を掴んで、便器に突っ込んだ。


 強烈な匂いだった。


むせ返るような吐き気と酸っぱい匂いが入り混じっていた。抗うが、キツネに頭を押さえられていて身動きできない。思わず水を飲みこんでしまう。すぐさま、胃液とともに胃が逆流して水を押し戻す。便器から離されるが、強烈な吐き気が何度も襲う。手足がぐにゃりと力を失い、倒れ込んだ。そうする間にも強烈な吐き気が催して来る。学ランがゲロでぐちゃぐちゃだった。強烈な眠気に襲われると、そのまま意識を失った……。

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