82話:1日だけの恋愛関係なら その3
「ねぇ、カリト君。もういっそこのままエッチな関係になっちゃおうよ」
リリィ先輩が擦り寄って手を俺の股間に触れてこようとしてくる。それを俺は手で払いのけて。
「ダメです。僕はあなたとはちゃんとした恋愛がしたいんです。そういう関係になるのはもう少し後にしましょう」
「ふふっ、そうやって私を焦らしてくれるのね。……ますます貴方の事をずっと見ていたくなるわ。はぁ」
「うっ……」
彼女の吐息が耳に降り掛かる。そんな誘惑を俺は理性をフルに使って邪念を払いのけ続ける。DTをこんな所で捨てるわけにはいかねぇからなっ!? てか、さっさとここから出ないといけないんだけどな……。
「もうそろそろ部屋を出ましょうよ先輩」
「えっ、なんて?」
「先輩」
「なんて?」
「…………リリィ」
「うん! なぁに?」
「はやくここから出ましょうよっ!? もっと良い感じなムードでこのまま過ごしたいって気持ちすっごく分る! 分るからな!? 俺だって恋愛経験のない童貞で。もっとせんぱっ「リリィ」――リリィと一緒に見つめ合いたんですけどねっ!?」
「じゃあ、カリトくん的には私と直ぐにでもエッチ。しても良いと言うことだよね?」
「直球ストレート過ぎてアウトですっ!?」
「えーっ、そういうことだと思ったのだけどー」
「あーもうっ埒が開かないなっ!!」
「えっちょっと!? きゃ!」
悶々とする気持ちに限界が来て俺はリリィ先輩を押し倒した。
「カリ……ト……くん?」
「…………」
お互いの鼻先がくっつきそうな距離感で俺は先輩を上から見つめている。彼女は突然の事で少し驚きながら頬を赤く染め、両手を重ね合わせて唇に触れ、潤んだ瞳で見つめ返している。
「キス……しよ……」
「…………」
キスの先に何があるっていうんだよ? 違うよ先輩。いや、リリィ……! 俺をこんな気持ちにさせたあなた。
「無理しないでくださいよリリィ先輩。無理に関係を迫らなくて良いんですよ」
「嫌い……なの?」
「違うわバカ」
「ば、バカって! 私とエッチがしたくないからそう行っているんでしょっ!?」
「そんな大人の都合は俺には知らねぇよ! 俺はまだあんたよりも人生経験が少ねぇんだってば! だがな。それでも俺はリリィ。あんたの事を最初から見た時から可愛くて美人だなって思ってたさ! もちろん直ぐにでもエッチな事できたらいいなって思ってたさ!」
「ふぁっ!?」
リリィ先輩が急にカーッと顔を赤くしまった。俺だって顔が熱くてたまらないんだけどなっ!?
「でもそれじゃあダメなんだ! 俺はあんたとちゃんとお互いに知り合って。時間が掛かっても愛を育みたいんだ! これも全部先輩が悪いんだからな! だから!!!」
「カリトくん……怖いよ……」
スッと息を吸い込んで、感情を込めた言葉を一瞬で考えてリリィ先輩にぶつける。
「責任とれよ!!!! 俺の為にお前が責任をとれ!!!!」
「きゅん……!」
全身を萎縮させ、唇に重ね合わせていた両手がギュッと強く握り締められるリリィ先輩の姿を目の当りにする。
「はぁ……はぁ……」
「私……私……」
発散と葛藤。互いに抱く感情が渦巻く距離感の中。俺と先輩が見つめ合い。そして。
「カリトくん。ごめんね。貴方の気持ちを知らずに私。一方的に好意を寄せすぎてたみたいだったね」
「肯定できませんね。いきなりすぎてびっくりです」
「責任……とらないとね……」
「ええ、これからずっと俺の為に責任を取ってください。リリィ先輩」
「また先輩ってよんだ」
「もう言い慣れたから修正がむずかしいですよ」
その瞬間俺とリリィ先輩は目を閉じ合い、唇を重ね合わせようと顔を動かして距離を縮めようとした。
――コンコン!
「失礼いたしますわぁお客様ぁ。この度はデボラの酒乱にご来店頂きまして誠にありがとうございますぅ! この度私ジェスタがお客様にご挨拶と思いまして参りましたぁ…………って、えぇえええええええっ!!!?」
まさかの展開。ジェスタと名乗る女が俺達の元に現れたのだった。
「ねぇ、カリト君。あのクソアマ。ぶっ殺してやりたいんだけど……」
「奇遇ですね。自分もこんな醜態を見られたので丁度思ったんですよ……」
既に一触即発の域を通り越していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます